2012 Fiscal Year Annual Research Report
マントルウェッジ深部流体の研究-造山帯かんらん岩を用いたアプローチ
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12J08040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
苗村 康輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 造山帯かんらん岩 / 超高圧変成帯 / マントルウェッジ / 深部流体活動 / 多相固体包有物 |
Research Abstract |
本年度はチェコ共和国・ボヘミア山塊の高圧変成帯に産するマントルウェッジ由来のザクロ石かんらん岩を用いて、(1)深部流体の化学組成決定と、流体活動時期を決定する上で重要な(2)ザクロ石橄欖岩の熱履歴決定を行った。 第一の課題である「深部流体の化学組成決定」を行うために、ザクロ石かんらん岩の高圧鉱物中に観察される深部流体の化石―「多相固体包有物」―の微細組織観察を行った。高解像度のFE_SEM装置で微細組織観察を行った結果、多相固体包有物は主に金雲母、ドロマイト、アパタイト、石墨などの含水鉱物と炭酸塩鉱物で構成されることが判明した。更に多数の包有物を検討した結果、鉱物量比が比較的均質であることが判明し、深部流体の化学組成が比較的均質であったことが示唆された。第二の課題である「ザクロ石かんらん岩の熱履歴決定」を行うために、チェコボヘミア山塊のザクロ石かんらん岩から新たに見いだしたセンチメートル・サイズの単斜輝石巨晶の化学分析を行った。この単斜輝石巨晶は結晶中央部にアパタイト、角閃石、金雲母などの含水鉱物を包有し、化学分析結果から中心部から周縁部に向かって、カルシウム(Ca)チェルマック成分と翡翠輝石成分が増加することが判明した。このことは比較的低温条件で含水鉱物と共存していた単斜輝石巨晶・中心部が温度圧力条件の増大を経験し、その際に周縁部が成長したことを示唆する。温度圧力履歴を定量的に推定するために、熱力学ソフトウェア「thermocalc」を用いて翡翠輝石成分とCaチェルマック成分の等量線を図示した相平衡図(シュードセクション)を目下作成中である。更に、単斜輝石の起源を探るためにレーザーICP装置を用いた微量元素分析を行った結果、ストロンチウム・鉛など可溶性元素に富み、HFS元素などの非溶性元素に乏しいため、単斜輝石の形成に「流体」が関与したことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は中国北西部の青海省(北チャイダム山地)の野外調査を行う予定だったが、当初野外調査の協力をお願いしていた楊建軍教授の都合が悪くなり、予定通りに研究を進めることが不可能となった。そこで、この一年間をなるべく有効に利用するために、当初は来年度(2013年度)に予定していたチェコボヘミア山塊の野外調査を繰り上げて昨年度6月始めに行った。その後もチェコボヘミア山塊のざくろ石かんらん岩の研究をメインに進めることで、時間を有効活用することを目指した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、中国地質科学院の張建新教授の協力により、6月~7月末の間に中国北西部のチャイダム山地で超高圧変成帯に産するかんらん岩の野外調査・試料採集を行う予定である。また、9月2~9日にイタリアで開催される「国際エクロジャイト会議」に参加し、昨年度行ったチェコ共和国・ボヘミア山塊のざくろ石かんらん岩に関する研究成果を発表する。更に帰国後はチャイダム山地で採集したかんらん岩の形成年代を決定するために、サマリウムーネオジウム全岩アイソクロン法を用いて地質年代決定を行う予定である。
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