2013 Fiscal Year Annual Research Report
マントルウェッジ深部流体の研究-造山帯かんらん岩を用いたアプローチ
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12J08040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
苗村 康輔 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 造山帯かんらん岩 / 超高圧変成帯 / マントルウェッジ / 中国青海省 / ボヘミア山塊 / 多相固体包有物 / キンバーライト / 温度圧力履歴 |
Research Abstract |
交付申請書に記した通り、以下の野外調査と室内実験を実地した。(1)2013年7月~8月に約一ヶ月間かけて中国青海省・北カイダム山地に見られる超高圧変成岩と造山帯かんらん岩体の現地調査を行なった。約200kgの造山帯かんらん岩試料を採取し、日本へ輸出することに成功した。現在薄片試料の作成、現在鉱物化学組成分析を行っている。これまでに得られた成果として、当地域の造山帯かんらん岩体から初めてエクロジャイト様岩石を発見した。(2)チェコ共和国・ボヘミア山塊の造山帯かんらん岩から見いだした多相固体包有物の微細組織および鉱物化学組成を更に進めた結果、多相固体包有物はカリウムと炭酸塩に富む超ポタシックなキンバー-ライト質メルト由来であることが判明した。この結果に基づいて、キンバーライト質メルトがマントルウェッジ深部(>200km以深)に存在する流体であることを主張する論文を現在執筆中である(Gondowana Research誌に投稿予定)。更に多相包有物からマイクロダイヤモンドを一粒子発見し、2013年9月にイタリーで開催された第10回・国際エクロジャイト会議で発表した。(3)マントルウェッジかんらん岩内部に見られる深部流体の活動時期・温度圧力条件を決定するために、野外調査で粗粒な輝石結晶の探索を行った結果、北カイダム山地では約5cmの斜方輝石、チェコボヘミア山塊では約5cmの単斜輝石を発見した。これらの輝石巨晶が記録する化学組成ゾーニング(累帯構造)に基づいて、造山帯かんらん岩が辿った温度圧力履歴の再構築を行った。その結果、ボヘミア山塊の造山帯かんらん岩が約120km以深の上部マントルから一度上昇後、再びマントル相当深度(約90km)に沈み込み最終的に地殻に浮上する2回転対流運動を経験したことを証明した。この結果に基づいて、造山帯下のマントル物質が記録するマントル対流運動と流体活動の時期に関する論文を現在執筆中(Geology誌に投稿予定)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は中国青海省およびチェコ共和国での野外調査を実地し、深部流体の化石である「多相固体包有物」の解析から「マントルウェッジ深部にはキンバーライト質メルトが存在する」という明確かつ斬新な結果を得ることができた。さらにイタリーで開催された国際エクロジャイト会議において口頭およびポスター発表を行うことができた。一方で研究成果の論文化と造山帯かんらん岩の年代測定が思うように進んでいない点が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、これまでに得られた研究成果 : (1)マントルウェッジ深部にはキンバーライト質メルトが存在する、と(2)マントルウェッジかんらん岩は2回転対流運動を記録していること、を速やかに論文化し公表することに全力を傾ける。さらに昨年投稿してリジェクトされた『中国カイダム山地の造山型かんらん岩』に関する論文についても、今年の前期期間中に書き直して再投稿する予定である。 本年度行う実験計画としては、前年度にする予定であったザクロ石かんらん岩の年代測定を開始したい。その為に高電圧パルス選択性粉砕装置(Selfrag社)装置を用いて、かんらん岩からジルコンやサルファイド等の目的鉱物を分離・濃集し、それらのU-Pb、およびRe-Os同位体比を質量分析計で測定することで形成年代を決定したい。
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Research Products
(3 results)