2012 Fiscal Year Annual Research Report
イデオロギー対立を超えたアジア太平洋地域協力－その先駆としての太平洋問題調査会
| Project/Area Number |
12J08068
|
|---|
| Research Institution | Waseda University |
|---|
Principal Investigator |
三牧 聖子 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 特別研究員(PD)
|
|---|
| Keywords | アジア太平洋 / 地域主義 / 国際交流 / 知識人 / トランスナショナリズム |
|---|
| Research Abstract |
本研究は、1925年に発足したINGOであり、同地域最大の多国間フォーラムとなった太平洋問題調査会(Institute of Pacific Relations : IPR)を、アジア太平洋地域における安全保障協力の萌芽として位置づけ、その活動を解明するものである。IPRには、アジア太平洋地域の諸国家のみならず、国際連盟には不参加であった米ソ、同地に植民地を有したヨーロッパ列強などの広範な諸国家が参加し、ナショナリズムやイデオロギー対立を持ち込まない「客観的」「科学的」な討論という原則の下、活発にアジア太平洋地域の諸問題を討議した。本年度は特に、IPRで「人間の安全保障」の萌芽というべき議論が展開されたことに注目して研究を進めてきた。植民地保有国から従属的な地位に置かれた諸国家まで、IPRに参加した多様な国家に共有されていたのは、アジア太平洋地域の安全保障を論ずるフレームワークとして、伝統的な「国家安全保障」は不十分であるという認識であった。こうした認識の下、IPRの安全保障対話は、人の移動や移民排斥、異文化理解、人種偏見やオリエンタリズムの是正など、伝統的な「国家安全保障」のカテゴリーには収まらない多様な幅を持つものとなった。進捗中の研究の一部は、2013年7月、オーストラリア国立大学で開催されるJapanese Studie Association of Australiaで報告予定である。研究成果の発表と研究ネットワークの構築にも努めた。国内では、10月に日本国際政治学会トランスナショナル分科会「戦間期の国際秩序構想」において、11月に東京大学アメリカ太平洋地域研究センターシンポジウム「太平洋関係のなかのアメリカと日本一歴史からの問い」で報告を行った。3月にはサンディエゴで開催されたAssociation for Asian Studies(AAS)でパネルPolitics of the Nation and Its Borders in 20^<th> and 21^<st> Centuryの司会兼討論者を務め、国内外の研究者と広く研究交流を行うことができた。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度前半は、国内で入手可能な資料を中心に収集し、3月には米国コロンビア大学でIPRに関する新たな一次資料を収集し、IPRにおける安全保障討論がどのような特徴を持っていたのかについての研究を進めてきた。その研究成果の核となる部分については、2013年度7月、Japanese Studies Association of Australiaにおいて報告する予定となっている。
|
| Strategy for Future Research Activity |
・2013年7月、オーストラリア国立大学で開催されるJapanese Studies Association of Australiaに、国内外のIPR研究者とともにパネル"Transnational people's network interconnecting Asia-Pacific major cities : The Institute of Pacific Relations(IPR) and Japan"を組織して応募し、アクセプトされた。同学会訪問の際、IPR研究の第一人者の1人であるオーストラリア国立大学Tomoko Akami教授など、オーストラリアの研究者と、今後の研究の発展の方向性について議論し、研究ネットワークの拡大に努める予定である。
・2013年秋より、ハーバード大学のWeatherhead CenterにProgram on US-Japan Relationsのフェローとして所属することが決定しており、米国を拠点に、一次資料の収集と、国内外の研究者との研究交流と研究ネットワークの構築に取り組む予定である。
|
Research Products
(9 results)
