2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本律令国家における祭祀と法-神祇令の展開と神祇官の成立-
Project/Area Number |
12J08073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久禮 旦雄 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 法学 / 日本史 / 法制史 / 宗教史 |
Research Abstract |
(1)神祇令と神祇官について 日本古代国家が編纂した律令法において、神祇がいかなる位置づけを与えられていたについて、同じく古代国家が編纂した正史における神話・神祇の位置づけと対比しつつ論じた「古代史料(史書・法典)と怪異」を東アジア恠異学会編『怪異学入門』(岩田書院)に掲載した。 また、律令法において神祇祭祀を規定した神祇令がどのような構造を持っていたかを考察し、その構造と執行機関である神祇官がどのようにして成立したかについて、続日本紀研究会での報告「神祇官の成立とその国家的意 義」・「神祇令の成立と神祇官の形成」において報告した。そこでは特に七世紀の王権が行なった神祇政策について『日本書紀』を中心に考察し、決して神祇令・神祇官による神祇祭祀が、七世紀の王権により一貫してその構築を目指された結果ではなく、いくつかの選択肢の中から当時の政治状況により選ばれたものであることを論じた。これは大阪歴史学会の古代史部会大会報告の準備報告であり、来年度につながるものである。 (2)在地祭祀について 神祇令によって規定される祭祀との比較対象として、当時の社会において行われていた祭祀がいかなるものかを考察したものとして、東アジア恠異学会例会での報告「『風土記』逸文にみえる神社と「崇」」を行なった。これは「山城国風土記逸文」や「尾張国風土記逸文」にみえる記事を対象として、神祇官のもとで使用された行政用語である「崇」で表記される以前の、神と人間との関係がいかなるものであったかを論じたものである。 (3)古代王権と神祇祭祀について 1古代王権と神祇祭祀の関係について、平安時代初頭において、新しい王統として帝位についた桓武天皇や嵯峨天皇が、自らの地位を正当化するために神話や神祇を利用した例について『続日本紀』や『類聚三代格』にみえる記事をもとに考察した。その報告が、祭祀史料研究会での「古代における賀茂斎院の存廃について」及び続日本紀研究会での「桓武朝の神話と宗教」である。これらの研究はいずれも法制と同時代の政治・社会との関係を重視しており、法制史研究に留まらない学際的な議論の可能性を含むものである。このような研究の成果を複数の研究会・学会で報告することができ、いまだ活字化には至らなかったものの、今後の研究の基盤となるものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の研究目的は律令法の外部に流通する祭祀と神祇令内部の祭祀とを比較検討し、また相互の関係を分析することで、古代社会内部における神祇令の位置づけを明らかにするものであり、それによって、法制史的視点と社会史的視点に基づく、神祇令の意義を明らかにし、古代国家の支配の正当性を構築するための理念と実態との関係を分析することを目指すものであった。今年度の研究は、神祇令・神祇官の成立史についての考察をはじめとして法制・祭祀と社会の関係についての研究報告を複数の研究会・学会で行うことができた。論文の活字化には至らなかったが、史料の収集・整理・分析などについて、次につながるものとなったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度には大阪歴史学会大会の古代史部会報告が決定したため、そこにおいて神祇令・神祇官成立に関する報告を行い論文化を進めたい。そのほか、神祇令の研究に加え、古代社会における神祇祭祀の具体相について、現地調査なども含めて検討を行っていきたい。その際には積極的な各地の学会・研究会への参加を行い、意見交換を行いたいと思う。また昨年度の研究報告の活字化にも勤めたい。
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Research Products
(5 results)