2012 Fiscal Year Annual Research Report
表皮樹状細胞の未知の起源の同定と表皮への動員に果たす毛嚢の免疫学的役割の解明
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12J08120
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 哲郎 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ランゲルハンス細胞 / 毛嚢 / 皮膚 / 免疫 |
Research Abstract |
我々は今年度、Lysozyme-M(LysM)-CreおよびCAG-CAT-EGFPシステムを用い単球系の細胞由来のランゲルハンス細胞を可視化し、その詳細な動態を観察した。興味深いことに、炎症を惹起するとランゲリン陰性のランゲルハンス細胞が顕著に誘導され、その多くはLysM-GFP陽性細胞であることがわかった。またこれらのGFP陽性細胞を経時的にトラフィッキングすると、ランゲリン陰性の細胞の割合が徐々に減少し、ランゲリン陽性の通常のランゲルハンス細胞が増加することを明らかにした。この結果より、炎症時にはLysM陽性の単球系の細胞が表皮に浸潤し、これらの細胞がランゲルハンス細胞に分化することが示唆された。我々はこれらの結果をまとめ、Nature Immunology(Nagao et al.2012)に報告した。 我々はこれまでに毛嚢を構成する細胞をその解剖学的な位置と発現する細胞表面マーカーに基づいていくつかのサブセットに分類すると、それぞれの場所から特徴的なサイトカイン、ケモカインが発現していることを見出した。リアルタイムPCRを用いてさらに解析を進めると、毛嚢は樹状細胞のトラフィッキングに関わるケモカインのみならず、リンパ球の分化、維持に関わるIL-7やIL-15などのサイトカインも発現していることが明らかになった。これより毛嚢は皮膚における「免疫学的な司令塔」として炎症反応などをコントロールしている可能性が示唆された。今後は毛嚢サブセットのマイクロアレイ解析を実施し、毛嚢の持つ免疫学的な機能をさらに明らかにしたい。 毛嚢の持つ免疫学的機能をさらに明らかにするために、我々は毛嚢幹細胞特異的にADAM17を欠損させたADAM17^<flox/flox>/Sox9-Creマウス(ADAM17コンディショナルノックアウト(ADAM17cKO)マウス)を作成した。興味深いことにADAM17cKOは皮膚炎を自然発症するとともに、掻痒行動や血清高IgE値などヒトのアトピー性皮膚炎に類似した表現型を示した。現在このcKOマウスにおける皮膚炎の発症機序、ランゲリン陰性ランゲルハンス細胞の役割などを解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はランゲルハンス細胞のトラフィッキングの実験から得られた結果をまとめ、論文に報告できたことは高く評価される。毛嚢サブセットが産生する新しいサイトカインをいくつか同定したが、予定していたマイクロアレイ解析が実施できなかったことが課題として残る。
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Strategy for Future Research Activity |
毛嚢サブセットの免疫機能の解析にはマイクロアレイの実施が不可欠であると考えており、今後は効率の良い細胞の採取方法などの工夫が求められる。一方、ADAM17を皮膚において欠損させたADAM17^<flox/flox>/Sox9-Creマウスがアトピー性皮膚炎に類似した表現型を示したことは大きな収穫であった。今後は本マウスがアトピー性皮膚炎とどのように類似した病態を示すかを詳細に解析し、皮膚炎における毛嚢免疫の役割を明らかにするとともに、アトピー性皮膚炎の新しい病態機構を探りたい。
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Research Products
(1 results)