2013 Fiscal Year Annual Research Report
表皮樹状細胞の未知の起源の同定と表皮への動員に果たす毛嚢の免疫学的役割の解明
Project/Area Number |
12J08120
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 哲郎 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ADAM17 / アトピー性皮膚炎 / 皮膚細菌叢 / マイクロバイオーム |
Research Abstract |
毛嚢の持つ免疫学的役割を解析するために作成した遺伝子改変マウスが予想外に皮膚炎を呈したことから、皮膚炎の病態解明というテーマに比重を置き研究を施行した。ADAM17は細胞表面に存在するEGFやTNF-αなど膜型の蛋白をシェディングすることで分泌型に変換する蛋白分解酵素である。ADAM17 を欠損した患者がアトピー性皮膚炎様の症状を持つことが最近報告された。我々はSox9を発現する表皮でADAM17を欠損させたAdaml7^<flox/flox>/Sox9-Cre(Adam17^<Sox9>)マウスを作製しその表現型を解析した。興味深いことにAdam17^<Sox9>マウスは掻痒行動を示すとともに皮膚炎を発症した。皮膚バリア機能の指標であるTEWLは高値を示し、バリア機能の低下が示唆された。病理組織学的には表皮の肥厚、皮膚への単核球および肥満細胞の浸潤が認められた。 Adam17^<Sox9>マウスは血清高IgE値およびTARC/CCL17の高値を示すことからTh2型の反応が病態に関与していることが示唆された。一方、皮膚所属リンパ節および皮膚でのサイトカイン発現パターンを解析すると、IFN-γを発現するTh1、IL-4を発現するTh2、IL-17Aを発現するTh17、IL-22を発現するTh22がそれぞれ野生型マウスと比較して顕著に増加していた。このことからAdam17^<Sox9>マウスの皮膚炎には様々なサイトカイン産生細胞が関与していると考えられ、これは近年ヒトのアトピー性皮膚炎で報告されている病態に類似していた。 アトピー性皮膚炎患者の皮膚では黄色ブドウ球菌の増殖を特徴とする細菌叢の異常(dysbiosis)が起きていることが以前より報告されてきた。そこで Adam17^<Sox9>マウスの皮膚から細菌培養を行ったところ、興味深いことに多数の黄色ブドウ球菌が分離された。続いてdysbiosisの状態を詳細に解析するため、細菌の持つ16SrRNA遺伝子を次世代シークエンサーを用いて網羅的に調べ、そこに存在する細菌叢を明らかにするmicrobiome解析を行った。その結果Adam17^<Sox9>マウスの皮膚の細菌叢は2週齢では野生型マウスと違いはないが、4週齢より細菌叢の構成が著しく変化した。特に8週齢頃よりStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)の割合が増加した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の研究計画とは若干の軌道修正があったものの、新しい遺伝子改変マウスの解析を通して「アトピー性皮膚炎の病態における細菌叢の役割」という科学的にも臨床医学的にも興味深い研究の方向性を見出した。さらには皮膚炎の発症に細菌叢の異常が大きく関わっていることを示すデータを得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は「アトピー性皮膚炎の病態における細菌叢の役割」についてさらに解析を進める。そこから得られる結果は永らく決着の着いていなかった「黄色ブドウ球菌の colonization はアトピー性皮膚炎の増悪因子であるか?」という問題の解決に貢献し、新しい治療方針の確立に寄与すると考えられる。
|
Research Products
(1 results)