2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ多孔体内部における水の相変化及び輸送に関する量子分子論的研究
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12J08214
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福島 啓悟 東北大学, 流体科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分子動力学 / 微細孔 / 液滴 / 表面張力 |
Research Abstract |
本年度は微細孔における液滴の動的挙動に関する研究を行い、液滴・壁面間の摩擦係数が微細孔の幅に依存するという、流体力学を用いた連続体モデルとの違いを明らかにした。 本年度は交付申請書にあった通り解析に使用するモデル及びプログラムの作成を行った。系は体積、分子数及びエネルギーが一定の系を考え、温度の制御は壁面モデルの一部を用いて行う事とした。壁面を一定の速度で運動させ、発生する力を液滴に加える事で液滴の加速を抑えた。これにより等速で液滴が運動する系を作成する事ができた。また、水分子数を変化させる事で壁面との接触面積が異なる液滴モデルを複数個作成し、壁面との間に働く力の面積に対する変化率として摩擦力の値を評価した。壁面の揺れ性を変える事で摩擦力にどのような影響がでるのかも議論した。 本研究により,流路が数nm程度の系では壁面・液滴間の摩擦力が微細孔の幅に依存し、その変化が液滴-壁面間の接触圧力の増加によるものであることを明らかにした。また、接触圧力の変化は表面張力による圧力増加であることを明らかにし、表面張力と液滴内部の圧力に関する関係式が5nm以下の系では成り立たなくなることを明らかにした。これらの研究結果は、微細な空間における液滴の運動が流体力学を用いたモデルにはない特徴を有していることを明らかにしたもので、学術的に大きな意味をもっている。また、近年微細な構造を有するデバイスの作成が盛んに行われており、微細な空間における液滴の運動に対する関心も高まっており、工学的にも大変有意義な研究結果であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,プログラムの作成に時間を使う予定であったが、開発が順調に進み様々な学会に参加することができた。また、論文の執筆も順調に進んでいる点や、来年度の研究に関する準備も大きく進んでいることから本研究は当初の予定より大きく進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は静止摩擦係数及び気液界面における摩擦係数に関する研究を行う予定である。これまでは界面から遠い領域における動摩擦係数の研究を行ってきたが、気液界面における表面張力が液演の運動に与える影響は大きいと考えられる。また、静止摩擦係数も液滴の挙動を理解する上で非常に重要な量であり、動摩擦係数と同様に微細孔の幅に依存するかどうかを明らかにしていきたいと考えている。
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