2012 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原糸状菌における比較・機能ゲノミクス研究を基盤とした病原性発現機構解析
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12J08246
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
高尾 和実 鳥取大学, 大学院・連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Alternaria alternata / トマトアルターナリア茎枯病菌 / LacA / 病原性遺伝子 |
Research Abstract |
LaeA遺伝子は多数の二次代謝産物を制御するグローバルレギュレーターとしてAspergillus nidulansで発見され、Aspergillus属菌においてクロマチンレベルで発現を制御していると考えられている。本遺伝子の変異株を使った解析は複数の病原性関連遺伝子を見出す事に繋がる可能性がある。本実験ではドラフトゲノム解析を行ったnecrotroph植物病原菌である茎枯病菌(Alternaria alternata tomato pathotype)を活用し、A. nidulansの相同遺伝子であるAaLAE遺伝子の破壊株を作出し、野性株と破壊株の病原性、毒素生産能および形態形成(胞子形成など)などの各種表現型の差異を解析した。形態比較および茎枯病菌が生産する宿主特異的AAL毒素生産能検定を行ったところ、破壊株は野性株と比較し、気中菌糸、胞子生産能および毒素生産が激減していた。また、病原性検定を行った結果、破壊株は野性株に比べ病斑が激減していた。Aspergilus属菌において、LaeAが制御する二次代謝産物クラスターの多くが染色体のテロメア側に座乗していることが報告されている。AaLAEAのAAL毒素生合成遺伝子クラスター(寵1クラスター)への発現制御を解析する為に、茎枯病菌の病原性染色体(CD染色体)に座乗するALTクラスターおよび他の座乗遺伝子の発現解析を行った。結果、破壊株で寵7クラスターの発現量が減少していた。これらの結果から、AaLAEAが茎枯病菌の病原性に関与していること、ALTクラスターの発現を正に制御している事が示唆され、AaLAEAが茎枯病菌における病原性遺伝子である事が明らかとなった。植物病原菌の病原性発現機構を分子レベルで解明することは、耐病性作物の育種および新規農薬の研究開発や新たな防除法の立案などの活用に繋がる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従い、Alternaria alternata植物病原菌のうちトマト病原型(茎枯病菌)を主な対象として、本菌における二次代謝産物生産のグローバルレギュレータであるAaLAEAをドラフトゲノム解析データより同定した。さらに、遺伝子ターゲッティング法によりAaLAEAの機能解析を進め、本遺伝子が、病原性、二次代謝産物生産能および形態形成(胞子形成など)をコントロールしていることを証明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、AaLAEAの機能および病理学的意義のより一般的な証明のため、A.alternatoイチゴ病原型菌(イチゴ黒斑病菌)およびリンゴ病原型菌(リンゴ斑点落葉病菌)においてもLaeAのホモログを同定し、機能解析を行う。 一方、A.alternato以外の植物病原菌においては、LaeAの解析は進んでいないので、ドラフトゲノム解析に基づくLaeAホモログの同定と機能解析を試み、本遺伝子の病原性関連因子としての役割を明確にしたい。また、AaLAEAの遺伝子発現コントロール機構についても、ゲノム情報に基づき詳細に解析する予定である。
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Research Products
(4 results)