2012 Fiscal Year Annual Research Report
新奇強誘電体材料ペロブスカイト型酸窒化物エピタキシャル薄膜の合成および物性評価
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12J08258
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 大地 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペロブスカイト / 酸窒化物 / 強誘電性 / 圧電応答顕微鏡 |
Research Abstract |
今年度はペロブスカイト型酸窒化物SrTaO_2Nエピタキシャル薄膜の強誘電性挙動の詳細な観察および、その起源に関する考察を行った。 強誘電性の詳細な観察には、主に圧電応答顕微鏡を用いた。ヴァージン状態のSrTaO_2N薄膜に対して観察を行ったところ、数マイクロメートル角程度のスケールでははっきりとしたドメイン構造が観察されなかった。しかし、数百ナノメートル角の領域を観察した結果、圧電応答のないマトリックス中に数十ナノメートル程度の圧電応答を示す微細ドメインが存在することが分かった。形状からの寄与の可能性を排除するために、マッピングした領域中の特定の点で電圧を掃引し、圧電応答挙動の比較を行った。 その結果、初期状態において圧電応答を示さなかった領域においてはリラクサー的なヒステリシス曲線が観察されたのに対し、微細なドメイン上では通常の強誘電体的なヒステリシス挙動を示した。すなわち、薄膜中でリラクサー的なマトリックスと強誘電体的な微細領域の二相からなる複雑なドメイン構造を持つことが明らかになった。 この微細構造の起源を解明するため、今年度から第一原理計算の専門家を共同研究者に迎え、アニオン配列構造の安定性について検討を行った。その結果、SrTiO_3基板との格子ミスマッチ(約-3%)により生じる面内方向圧縮歪みがtrans型配置の安定化に寄与し得ることを発見した。現在、上記の微細なドメイン構造は、リラクサー的な挙動を示すcis型配置の構造と通常の強誘電性であるtrans型配置の構造が混合した状態により形成されたものではないかと考えている。この結果はエピタキシャル応力を利用したアニオン配列、および、それに伴う物性の制御が可能であることを示唆するもので、今後のアニオン複合系の研究に一定の道筋を示すものである言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった物性評価だけでなく、予想外のドメイン構造の観察、および、微細なアニオン配列構造の予想まで達成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
SrTaO_2N薄膜の物性、および構造調査に関する現状での課題として、まず、下部電極材料の形成が困難であることが挙げられる。次年度においてはこれらの課題の解決を目標に、下部電極材料の模索を計画している。候補としては還元条件に耐性のある金属酸化物SrVO_3が挙げられるが、格子ミスマッチの問題は解決できない。状況によっては金属特性を示すペロブスカイト型酸窒化物の開発を行うことも検討している。
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Research Products
(1 results)