2012 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期ドイツにおける合同製鋼・銀行・国家の関係
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12J08288
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊東 林蔵 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 合同製鋼 / 銀行 / 国有化 / ヴァイマール共和国 / H・ブリューニング / H・ディートリッヒ |
Research Abstract |
2012年度は、6月17日にドイツ資本主義研究会において「両大戦間期ドイツ鉄鋼業と銀行の関係―合同製鋼を事例に―」という題目で研究報告を行った。本題目は、世界恐慌期に破産の危機に陥ったドイツ最大の鉄鋼企業である合同製鋼が、国有化の後に、政府(国家)と銀行の協力によって債務を借り換え、組織再編を行った過程を明らかにしたものである。この時点では一次史料に基づく実証が不充分であったため、科学研究費の助成を受け、7月にベルリンの連邦文書館(Bundesarchiv Berlin-Lichterfelde)において合同製鋼を傘下に置いたフリック・コンツェルン、銀行、政府(内閣文書、政府系監査会社等)の史料を収集し、9月にデュースブルクにおいて合同製鋼の後継企業テュッセン・クルップの文書館(Thyssen Krupp Konzernarchiv, Duisburg)で合同製鋼の内部史料を収集した。テユッセンクルップ文書館所蔵の史料は日本人研究者によってほとんど使用されたことがない。これらの史料によって得られた知見は、合同製鋼の国有化は、その前年(1931年)に行われたドレスデン銀行、ダナート銀行の国有化と連続した政策構想のもとで行われていたということ、政府が合同製鋼を国有化した理由は、第一にドイツの金融システムの破綻を阻止するためであったことが明らかになった。このことは、ワイマール共和制末期における国家と市場の関係、政府と企業の関係に新たな示唆を与えるものである。この成果を踏まえ、11月10日の政治経済学・経済史学会秋季学術大会において「両大戦間期ドイツ鉄鋼コンツェルンと銀行業の関係―合同製鋼の国有化に注目して―」を報告した。この成果は、2013年度夏季を目標に政治経済学・経済史学会の学術誌『歴史と経済』に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、『歴史と経済』に2012年度中の投稿を考えていたが、夏季に実施した史料調査により新たな知見が得られたため、また並行して国有化の思想的・時代背景に迫る論文も執筆中であるため、2013年度のドイツ長期滞在の準備のためなどで、2013年度に延期となった。しかし、夏季の史料調査により、後の研究テーマの史料も広範に得られたため、全体として見れば収穫の方が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度4月よりドイツのルール大学ボーフム歴史学部(Ruhr-Universitaet Bochum, Fakultaet fuer Geschichtswissenschaft)に1年間の長期滞在をしているが、本年度中に博士論文の史料調査、論文の各章の構成などを仕上げる予定である。合同製鋼の国有化に関わる論文を完成させ投稿し、国有合同製鋼の再建過程と銀行の関係、再私有化後の両者の関係まで研究を進める。2014年度には、それらのテーマを学会で報告し、論文として投稿する。2014年度の調査では、第二次大戦の両者の関係まで射程に入れる予定である。
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Research Products
(1 results)