2013 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期ドイツにおける合同製鋼・銀行・国家の関係
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12J08288
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊東 林蔵 東京大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(CD1)
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Keywords | 合同製鋼 / ドレスデン銀行 / 国有化 / コンツェルン |
Research Abstract |
平成25年度は, ドイツにおける最新の企業史研究の成果を吸収すべく, また博士論文執筆に必要な一次史料を収集すべく, 平成25年4月21日から平成26年3月13日までドイツのルール大学ボーフム歴史学部経済企業史講座のディーター・ツィーグラー教授のもとで研究に従事した. 当初の計画は, 戦間期ドイツ最大の鉄鋼企業であった合同製鋼が世界恐慌期に国有化され, それ以前には非協力的であったドイツ銀行業が, 信用取引において協力的になったことで合同製鋼の再建が促進された経緯を明らかにしていくというものであった. しかし, ツィーグラー教授との面談と, テュッセンクルップ・コンツェルン文書館を中心とする史料館での調査を経て, 1931年7月の金融恐慌後に国有化されたドレスデン銀行と合同製鋼の国有化の関係を問うことの重要性に注目するようになった. すなわち, 従来はドレスデン銀行の国有化・再建と合同製鋼の国有化・再建は個別の研究領域として扱われていたが, 一次史料を通じて, 両者が, 戦間期を通して, さらに合同製鋼を傘下に治めていたプリック・コンツェルンを通して, 緊密な取引関係を形成していたこと, 国有化を実施した当時の首相H・ブリューニングが両者の再建における関連性を強調していたことが明らかになってきた. 平成25年度は, 政府の介入によって合同製鋼が銀行業との関係をどのように再建していったかという博士論文の課題において中心的なテーマである, 国有化されたドレスデン銀行と合同製鋼の再建がいかに関連していたかを問う論文の執筆を中心的課題にした. しかし, 両者の関係を示す史料は膨大に存在し, またフリック・コンツェルン内の子会社の資産を担保にした信用供与などが行われていたため, 単に両者の直接的取引に関わる史料を読むだけでは不充分であり, 史料のコピーを許可していない文書館も多く, ドレスデン銀行と合同製鋼の国有化・再建に関する論文の学会誌への投稿は平成26年度へと持ち越しとなった. ドイツ人にも示唆を与える研究成果を残すためにも充分な史料読解が必要となるため, 史料収集に費やした1年は有意義であったと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西洋史・西洋経済史においては, 史料へのアクセスが困難であり, また語学的な負担もあるため, 他分野よりも論文の作成に時間がかかり, 投稿・掲載は遅れる傾向がある. 25年度の集中的な調査によって, 現在執筆中の論文以外の史料も収集できたため今後並行して研究成果を発表できることが見込める.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度にドイツで収集した史料をもとに, 現在完成を目指している合同製鋼とドレスデン銀行の国有化・再建に関わる論文, 大銀行とは異なる論理で行動する個人銀行と合同製鋼の再建との関係を扱った論文, 合同製鋼が国有化されたことにより合同製鋼と中間層的な性格を有する機械工業との関係がいかに変化したのかを扱った論文を同時並行的に作成し, 後者2つの発表を目指す. 博士論文の執筆にあたって, 上記の課題が, 合同製鋼という巨大企業がもたらした全ドイツ的経済問題を解決し, 市場経済が再機能することを目的に国有化がなされたことを明らかにする.
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