2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J08300
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹迫 知博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超対称性 / インフレーション / 熱場の量子論 |
Research Abstract |
本年度において、私は暗黒物質を含むような素粒子模型に関する宇宙論について研究を行った。大きく分けると、以下の2つのトピックについて詳しく解析し、それぞれにおいて成果を論文の形でまとめた。 まず、最小超対称標準模型に現れる素粒子場の、宇宙の指数関数的膨張期(以下ではインフレーション期とよぶ)における振る舞いについて詳しく解析した。平坦方向と呼ばれる、ポテンシャルを感じない素粒子場の方向は、インフレーション中にはランダムウォークすることが知られている。最近になって他のグループが、インフレーション中での平坦方向の数値シミュレーションを初めて行ったが、その解析では平坦方向と結合する素粒子場の質量が適切に扱われていなかった。そこで今回我々は、素粒子場の質量をランダムウォークに取り入れ、数値シミュレーションの再計算を実行した。その結果、我々は先行研究と質的に違う結論を得た。すなわち、平坦方向のランダムウォークは最終的には自由場とみなせる。今回用いた数値計算手法は、カダノフ-ベイム方程式とは別な視点で非平衡過程を扱うものであり、今後の研究に活かせると期待される。 一方で、私は超重力模型における宇宙論の研究を行った。具体的には、非常に高温の宇宙において、宇宙のプラズマと非常に弱くしか結合していない場(以下φ)の有効質量を計算し、明示的な表式を得た。とくに、与えられたプラズマからどのようにして有効質量が生じるかを、見通しよく計算する手法を提案することが出来た。我々はこの手法を、最小超対称性標準模型の粒子から構成されるプラズマの場合に適用し、φの有効質量の表式を結合定数についてリーディングオーダーで得た。この結果は、宇宙が輻射優勢期のときに素粒子場の振る舞いを考察する上で重要となる。これらは、非平衡場の理論が基礎をおく、熱場の量子論を学習している過程で得られた成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非平衡過程を扱う上でのバックグラウンドとなる知識を蓄えることができているため。カダノフ-ベイム方程式を用いた解析にはまだ至っていないが、学習する中で副産物としての成果を上げているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた成果を元に、超重力模型におけるより詳細な宇宙論の議論を展開する方針である。暗黒物質の対消滅過程に対するカダノフ-ベイム方程式の適用には、技術的な困難(量子補正を高次まで取り入れる必要があること、カダノフ-ベイム方程式が複雑となること)がある。どのような場合にカダノフ-ベイム方程式が簡単化されるかについて考察していきたい。
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Research Products
(10 results)