2012 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭アメリカのシティズンシップ教育の研究-社会諸集団の多様性に注目して
Project/Area Number |
12J08307
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
斉藤 仁一朗 東北大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シティズンシップ / アメリカ社会科学 / 人種 / 公民科教育 |
Research Abstract |
今年度は、20世紀初頭のアメリカにおける主要な複数の公民科教育者(アーサー・W・ダン、ジェームズ・L・バーナード、トマス・J・ジョーンズ)の教育観を中心に研究し、その成果を論文として発表した。 第一に、アーサー・W・ダンの教育観に関する考察については、日本カリキュラム学会の『カリキュラム研究』第22号に掲載された。この論文では、これまであまり研究されてこなかったダンの授業実践に着目し、当時の公民科実践が、街の改善そのものと関連していたことを明らかにした。また、その際には、公民科改革の背景には、移民黒人の住む地域への社会改善を行おうとする意図があったことを明らかにした。 第二に、ジェームズ・L・バーナードの教育観に関しては、日本公民教育学会および全国社会科教育学会において発表した。この発表内容は、日本公民教育学会の『公民教育研究』第20号に掲載された。この発表及び論文では、バーナードの公民科教育論に職業指導の側面が強調されるようになる過程を分析した。その結果、バーナードが、社会的価値を教授する公民科教育において、「職業」の概念を中核にして市民統合を行おうとしていたことが明らかとなった。 第三に、トマス・J・ジョーンズの教育観に関する考察については、東北教育学会において発表し、論文は、全国社会科教育学会の学会誌にて査読中である。この発表においては、ジョーンズが多様な人種の混在する当時の社会を考慮し、相互に共生するための教育を構想していたことを明らかにした。 また、2012年の11月下旬に米国に行き、研究に必要な文献を収集を行った。 今後は、上に示した三人の公民科教育者を中心としつつ、20世紀初頭のアメリカにおいて、「良き市民の育成」という考え方が、どのような背景をもって生み出されたのかについて、系統的な分析を進めて行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、20世紀初頭のアメリカにおける主要な公民教育論者達が、社会に存在している人種的多様性や社会階層の問題などを捉え、自身の教育論を作成しているという、具体的な関係性を明らかにすることができた。これらの分析結果は、現地資料の収集の成果にも関連している。 このような研究内容を、3ヵ年の研究計画の第一年目に果たせたことからも、全体の研究計画および「研究の目的」の達成に向けて、当初の予想より早く研究が進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における今後の推進方策としては、主に二点が挙げられる。 第一に、今年度、学会誌に掲載された二つの論文を中核としつつ、20世紀初頭のアメリカにおける公民科教育の一般的な潮流およびその他の有力な公民科教育論の特徴を明らかにする。これらの研究成果に関しては、随時、定期的な学会発表および論文掲載によって進めていく。 第二に、これまでにまとめた研究成果をもとに、米国における主要学会での学会発表を試みていく。この発表を行う学会としては、History of Educational Societyを想定している。 なお、これらの研究を行う際には、米国における学会参加および学会発表の機会と並行して、現地での史料収集を進めていく予定である。
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Research Products
(7 results)