2012 Fiscal Year Annual Research Report
角度分解光電子分光及び時間分解電子線回折による高温超伝導体の研究
Project/Area Number |
12J08331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
出田 真一郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 鉄系高温超伝導体 / 角度分解光電子分光 / 電子構造 / 時間分解電子線回折 |
Research Abstract |
●銅酸化物高温超伝導 三層系銅酸化物高温超伝導体Bi2223は、試料作製が困難なことからBi系高温超伝導体の中で最も高い超伝導転移温度(Tc)を示すにも関わらず、先行研究は少ない。Bi2223の角度分解光電子分光(ARPEs)測定をTc以下の低温から室温付近まで系統的に行い、3枚のCuO2面の電子構造を分離して、外側と内側のCuO2面のバンド(OP,IPバンド)のそれぞれのキンクのエネルギー位置の変化を詳細に調べた。OP、IPバンドで超伝導ギャップの大きさの違いを反映したキンクの異なるエネルギー位置が観測され、理論との整合性を調べた。その結果は、国際学会で発表され、その会議抄録としてまとめられ受理された。 ●鉄系高温超伝導 鉄系超伝導体は、銅酸化物高温超伝導体に次ぐ高いTcを示すため、近年盛んに研究が行われている。強磁性金属であるBaFe2As2のFeサイトに遷移金属原子(Co,Ni,Cu)を置換するとFeAs層に電子がそれぞれ1,2,3個ドープされ超伝導が発現すると考えられていた。しかしながら、Feサイトを遷移金属原子で置換することが及ぼす電子構造の変化については自明ではななく、電子構造の詳細な研究が必要である。遷移金属原子で置換することによる電子構造を調べるために、高分解能ARPESをBa(Fe1-xNix)2As2、Ba(Fe1-xCux)2As2で行い、それらの電子構造が、単純なリジッドバンド的な変化をしないことを明らかにした。この研究成果はPhyical Review Lettersに掲載された。 ●時間分解電子線回折 時間分解電子線回折実験装置の建設は現在進行中で、測定チェンバーは~2×10^{-10}Torrの超高真空度が実現されている。またレーザー及びその光学系のセットアップを現在行っている。今後は、フェムト秒パルスレーザーの波長を非線形光学結晶を用いて4倍波にし、フォトカソードからの光電子が発生することを確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銅酸化物高温超伝導体の電子構造の研究では、研究目的であるバンド分散のキンク構造を詳細に調べることに成功し、その研究成果を発表することができた。また、時間分解電子線回折では、所属研究室にて実験装置の建設が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
銅酸化物高温超伝導体、鉄系超伝導体のARPES及び時間分解電子線回折の実験を行い論文執筆を行う。今後は、共同研究としてドイツ、ハンブルクにあるCenter for Free Electron Laser Scienceにおいて、時間分解電子線回折実験を行う予定である。
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Research Products
(4 results)