2012 Fiscal Year Annual Research Report
SRSF3遺伝子を標的とした新たな癌治療法の開発を目指すRNA研究
Project/Area Number |
12J08354
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
赤池 瑶子 徳島大学, 医科学教育部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | SRSF3 / HIPK2 FL / HIPK2 Δe8 / HP1γ / DNA障害 / DNA修復 |
Research Abstract |
平成24年度は、SRSF3のノックダウンにより特異的に生成されるHIPK2〓e8の機能解析を行った。HIPK2〓e8はユビキチンリガーゼSiah-1との結合領域の一部を欠損しており、免疫沈降法によりSiah-1と結合せず、タンパク質合成阻害剤とプロテアソーム阻害剤により、HIPK2FLより安定であった。さらに、p53 Ser46のリン酸化能とアポトーシス誘導能はHIPK2FLと同様であった。このように、SRSF3のノックダウンによるHIPK2〓e8の選択的な発現は、癌細胞の細胞死を誘導することを明らかにし、がん治療の新たな標的分子となる可能性を示した(Oncogene, 2013)。 さらに、HIPK2FL及びHIPK2〓e8の新規標的因子の同定にも着手し、質量分析法によりクロマチン構成因子HPIγを同定した。HP1γはクロマチン構造を制御し、DNA障害に応答してクロマチンとの結合を変化させ、DNA修復を制御することが示唆されている。HIPK2によるエピジェネティクス制御を明らかにするため、HIPK2とHP1γとの相互作用とその意義について検討した。1)免疫沈降法によりHIPK2はHP1γに特異的に結合すること、2)低用量UV-C照射により、コントロール細胞ではHP1γのリン酸化が増強したが、HIPK2ノックダウン細胞では減弱したことから、HIPK2はHP1γをリン酸化すること、3)免疫沈降法により、HIPK2はHPIγのピストンH3 Lys9のトリメチル化サイトへの結合を減弱させることを明らかにした。また、HIPK2ノックダウン細胞に低用量UV-Cを照射すると、ピリミジンダイマーとγH2AXが集積し、DNA修復の異常が示唆された。これらの新たな知見を基に、HIPK2-HP1γを介するDNA修復制御機構の存在とその分子機構の解明に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
HIPK2〓e8の機能とその病態生理学的意義の解明に関して、1)HIPK2 FLよりも安定なタンパク質であること、2)HIPK2 FLと同様にp53Ser46のリン酸化能、及び、アポトーシス誘導能を有すること、3)SRSF3のノックダウンによるHIPK2〓e8の選択的な発現が癌細胞の細胞死を誘導することを明らかにし、がん治療の新たな標的分子となる可能性を示した。これらの研究成果は誌上発表し、当初の計画以上の成果を上げた(Oncogene,2013)。 さらに、HIPK2FL及びHIPK2〓e8の新たな標的因子としてクロマチン構成因子HP1γを同定し、HIPK2によるエピジェネティクス制御機構、並びに、HIPK2-HP1γを介したDNA修復制御機構の解明に焦点を絞り、HIPK2の新たな機能の解明に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、HP1γを介したHIPK2の新たな機能の解明に焦点を絞り、1)HIPK2とHP1γの相互作用に関する検討、2)HIPK2-HPIYを介したDNA修復制御機構の解明を行う。1)に関しては、免疫沈降法と共焦点レーザー顕微鏡により、HIPK2と結合するHP1γの結合領域を同定する。さらにin vitro kinase assay法により、HIPK2によるHP1γの翻訳後修飾を明らかにする。2)に関しては、HIPK2をsiRNAによりノックダウンしたHcT116細胞、並びに、HIPK1^<-/->HIPK2^<-/->MEF細胞を用いて、共焦点レーザー顕微鏡とELISA法により、γH2AX、DNA修復因子、及びピリミジンダイマーの集積を明らかにする。
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Research Products
(6 results)