2012 Fiscal Year Annual Research Report
極低温単一タンパク質分光を用いた電子移動反応におけるタンパク質構造の役割の解明
Project/Area Number |
12J08402
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
近藤 徹 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(PD)
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Keywords | 単一分子分光 / 電子移動 / 顕微分光 / 光合成 / 光合成反応中心 / タンパク質 / ヘリオバクテリア |
Research Abstract |
本研究課題では、生体反応に伴いタンパク質構造がどのように変化するのか?、また逆にタンパク質の構造変化が反応にどう影響するのか?、という「タンパク質構造の動的変化と機能の相関」を明らかにする。そのためにヘリオバクテリア光合成反応中心(hRC)内で電子伝達担体として機能するChla分子(A_0)の単一分子蛍光励起スペクトルを測定し解析する。今年度は主に測定に用いる顕微分光装置の作成を行った。 作成した顕微分光装置は以下のように励起光源部分と顕微鏡部分の2つに大きく分けられる。 励起光源部分:TiSaフェムト秒レーザーから出た750nmのパルス光を高非線形性のフォトニック結晶単一モードファイバーに入射して広帯域のスーパーコンティニューム(SC)光を得る。SC光をプリズムで分光して励起光源として用いた。500~800nmの波長範囲で1nmピーク幅の光を出力できる波長可変光源を作成した。ファイバーの出力側を顕微鏡につなげて励起光として用いた。 顕微鏡部分:光源からの光はビームスプリッター(800nmより短波長を反射、長波長を透過)を経由して電動ミラーで反射させた。2枚の凹面ミラーを通した後に対物レンズに入射させた。電動ミラーを制御することで対物レンズに対する光の入射角度を自由に変化させることができ、サンプル基板表面(焦平面)上での2次元レーザースキャンが可能である。対物レンズは所属研究室で開発された反射型タイプのものを用いており、色収差なく励起波長をスキャンできる。サンプルからの蛍光はAPDに入力され光子数がカウントされる。サンプルはクライオスタット内に設置されており極低温で測定が可能である。 作成した装置で色素分子ATTO700のテスト測定を行った。低温(80K)で単一分子蛍光イメージ画像の取得に成功し、単一分子蛍光励起スペクトルも得られた。大阪大学理学研究科大岡宏造准教授に精製を依頼していたhRCサンプルも完成し、今後、hRC内電子伝達担体A_0の単一分子分光測定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは何よりも測定装置を構築する必要があった。安定した励起光源・精度のよい顕微鏡の2つを作成することができ、本研究課題を遂行する上での準備を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
測定装置が完成したので今後はhRCサンプルを用いた本格的な測定を行う。まずはhRC内電子伝達担体A_0の単一分子蛍光励起スペクトルを測定する。また、必要に応じて装置の改良も行っていく。特に励起光の偏光制御を行う機構を導入する予定である。現在、国内で液体ヘリウム不足が深刻化しており極低温(4K)での測定を行うのは難しいが、当面は液体窒素を用いて研究を進める。
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