2013 Fiscal Year Annual Research Report
極低温単一タンパク質分光を用いた電子移動反応におけるタンパク質構造の役割の解明
Project/Area Number |
12J08402
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
近藤 徹 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(PD)
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Keywords | 単一分子分光 / 電子移動 / 顕微分光 / 光合成 / 光合成反応中心 / タンパク質 / ヘリオバクテリア |
Research Abstract |
本研究課題では、生体反応に伴いタンパク質構造がどのように変化するのか? 、また逆にタンパク質の構造変化が反応にどう影響するのか? 、という「タンパク質構造の動的変化と機能の相関」を明らかにする。そのためにヘリオバクテリア光合成反応中心(hRC)内で電子伝達担体として機能するChla分子(A_0)の単一分子蛍光励起スペクトルを解析する。今年度は、昨年度から製作している顕微分光装置を改良し、単一hRCの極低温測定を行った。 装置の改良では主に波長可変光源の高出力化・安定化、及び偏光制御機構の導入を行った。本装置では、TiSaフェムト秒レーザーのパルス光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に入射し得られる広帯域のスーパーコンティニューム(SC)光を用いる。PCFへの入射光のビーム径や波長を最適化してSC光強度を向上させた。SC光はプリズムで分光後、レンズで波長選択的にファイバーにカップリングし顕微鏡に出力した。これらのレンズやファイバーは1つのべ一スプレート上に配置され、電動ステージで動かし波長を変える。ステンレス製のベースプレートやホルダー類をより軽量なアルミで作製し直し出力安定化を図った。また、λ/2、λ/4波長板を設置し、630~710nmの範囲で偏光を制御した。 製作した装置で単一hRCの測定を行った。6Kで単一分子蛍光イメージ画像の取得に成功した。励起波長をスキャンして単一分子由来の蛍光励起スペクトルを得た。hRCには2つのA_0分子が結合しているが、偏光依存性や各ピークの相関関係からそれぞれの単一分子スペクトルを同定した。スペクトルの時間変化や偏光測定から、ピーク波長のシフトに伴う遷移双極子モーメントの角度変化を明らかにした。ピークシフトはタンパク質内の分子結合サイトの水素結合環境の揺らぎに対応づけられており、それらの影響で結合分子の遷移双極子モーメントの方向が揺らぐことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極低温用の蛍光顕微鏡が完成し、単一hRCの測定に成功した。hRC内に結合する単一Chlα(A_0)分子k蛍光励起スペクトルも得た。これを解析することで本研究目的を達成できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに測定装置を完成させ、目的としていたhRC内単一Chlα(A_0)分子の蛍光励起スペクトルを得た。今後は蛍光励起スペクトル測定を進めていくとともに、蛍光スペクトルも観測する。単一hRCから励起スペクトルと蛍光スペクトルの両方を得ることで、吸収体と発光体の相対配置や揺らぎの関係性などを解析していく。さらに、光照射でhRC内の重子移動反応を誘起させながら極低温下に冷却し、その状態で構造を凍結する。スペクトルがどのように変化するかを観測する。
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Research Products
(4 results)