2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08422
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
商 兆琦 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 足尾鉱毒事件 / 田中正造 / 勝海舟 / 福沢諭吉 / 島田三郎 / 陸羯南 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの鉱毒事件研究の殆どは、田中正造を中心に取り組んでおり、鉱毒事件に関して明治思想界全体におけるそれぞれの見解の矛盾、対立、錯綜を見出すことはできない。本年度の研究実施状況は、次の三部分に分けられる。 まず、本研究者は、脱構築主義者が作り出した瓦礫の山から抜け出すために、「歴史研究」の方法、有効性とそのレーゾンデートルの証明を試みた。 次に、本研究者は、鉱毒事件をめぐる勝海舟、福沢諭吉、田中正造、島田三郎、陸羯南などの知識人たちの意見の対立、衝突及び交錯という歴史場面のコンテクストを「再構築する」ことを通じて、彼らの思想世界に横わたる根本的な動機を分析し、それぞれの思想像や思想構造を解剖する作業を試みた。2014年10月25日の「日本思想史学会2014年度大会」において、本研究者は、「明治日本における足尾鉱毒事件の思想像--勝海舟と福沢諭吉を中心として」という口頭発表を行った。この発表では、勝の問題意識が、「どのように民衆を治めるか」であることと異なり、福沢の問題意識は、「どのように新しい民心を作り出すか」ということを指摘した。島田と陸は、いずれも藩閥政府が主導した文明開化を問題視し、「下層社会」の改革の必要性を盛んに唱えた。つまり、人民の勢力の発達がなければ、社会的な規模の文明化の達成は、決して不可能ということで二人の見解は一致している。 第三、中国の近代化、急速な経済発展を遂げて物質的に豊かになったが、精神の面ではそれに見合うだけの収穫がなかった。その最大の理由は、人々の自主性、自発性、自律性などの「近代性」が遅々として、確立されていないことであろう。本研究員は、「方法としての日本」という方法的視座に基づいて、鉱毒事件をめぐる明治知識人の議論とその思想世界を考察することを通じ、中国における「近代性」問題に対して一つの「動的な展望」を提供しようとする。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)