2012 Fiscal Year Annual Research Report
パレスチナ被占領地における動員構造の社会学的検討:インティファーダ以前を中心に
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12J08429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 啓之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中東地域 / パレスチナ問題 / 社会運動論 / インティファーダ |
Research Abstract |
平成24年度の研究実績について、以下の通り現地調査の成果とその学術的意義を中心に報告する。 8月初旬から9月末にかけて、エルサレムのヘブライ大学ローズバーグ国際学校が開設する夏期語学講座を受講し、日常会話レベルのヘブライ語の習得に努めた。また、これと並行して現地研究機関が収蔵する文書資料の参照および収集を行った。1970年代に発行されたアラビア語の日刊紙(『アッ=シャアブ』、『アル=ファジュル』、『ファタハ』…それぞれ一部)、外交文書集(『パレスチナ・アラブ文書集』1965~1981年版、レバノン侵攻の影響か以降2006年版の発行まで年号に飛びがある)を参照し、適宜複写によって収集した。 これら一次資料の分析により、1970年代からインティファーダの時期にかけて、パレスチナ被占領地内部の指導者と外部の指導者のあいだの声明のやりとりが、部分的ながらも具体的な姿で明らかになりつつある。1987年に被占領地内部で発生した大衆蜂起インティファーダは、徐々に被占領地外部にあったPLOの統制を受けて変質したと先行研究で指摘され、本研究課題の主要な関心の一つとなっている。この域内と域外という対立軸は、PLO単独によってイスラエルとの和平交渉が開始された1993年以降により明確な形でパレスチナ問題の展開を左右した。したがって、PLOによる解放闘争が本格的に始まる1970年代頃までさかのぼる一次資料の分析は、インティファーダの分析のみならず今日のパレスチナ問題を理解する一助ともなる。 以上の研究成果の一部は、『中東研究』や『境界研究』などの機関誌、学術雑誌にて論文として発表したほか、日本中東学会、アジア中東学会連合研究大会、日本国際政治学会など国内外の学会においてそれぞれ報告を行っている6また、人間文化研究機構(NIHU)プログラム「イスラーム地域研究」東京大学拠点(TIAS)の研究会での報告、一般公開シンポジウムでの発表により、研究成果の社会的発信にも力を入れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アラビア語文書資料の収集に関して、当初想定していたよりも早い進展が見られた。各研究所司書の許可を得て行った資料の複写によって国内への持ち帰りが可能となり、現在分析を進めている段階である。一方でヘブライ語文書資料の収集は未だ一般学術書籍のみにとどまり、またアラビア語による証言の収集も未実施である。このため、平成25年度に新たに長期の現地調査を要する状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の3点において研究を推進する。 第一に、すでに収集した資料の内容分析を継続して行う。この成果は平成25年度日本中東学会年次大会(報告受理済み)などで発表する予定である。 第二に、ヘブライ語文書資料の収集と併せ、アラビア語による証言資料の収集に努める。このために夏期に再度現地調査を実施する予定である。 第三に、一次資料から示された事実を社会運動論など既存の理論と比較、または比較可能なまでに抽象化することで、パレスチナの抵抗運動の特徴をより明確に提示していく。また、これらの分析を論文にまとめ、学会誌や学術雑誌に投稿する。
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Research Products
(5 results)