2013 Fiscal Year Annual Research Report
パレスチナ被占領地における動員構造の社会学的検討:インティファーダ以前を中心に
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12J08429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 啓之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中東地域 / パレスチナ問題 / 社会運動論 / インティファーダ / 抵抗運動 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績について、以下の通り現地調査の成果とその学術的意義を中心に報告する。 8月中旬より9月上旬にかけて、パレスチナ暫定自治区ナーブルスおよびエルサレムで調査を実施し、インタビュー調査と文書資料の収集の面で成果があった。前者に関しては、労働組合関係者、女性団体関係者、難民キャンプのソーシャル・ワーカーなどにインタビュー調査を実施し、大衆蜂起インティファーダ(1987~1993年)までの政治活動や団体活動に関し、具体的に話を聞くことができた。また後者に関しては、市立資料館(ナーブルス)、立法評議会図書館(ラーマッラー)、トルーマン平和研究所図書館(エルサレム)などで未刊行資料を含めて多くの文書資料を参照、複写した。 これらの調査の結果から、パレスチナ解放機構(PLO)系組織のうち特にファタハによる活発な住民動員が1980年代初頭より行なわれていたことが示唆され、調査で収集したインティファーダの指令文書(約800点)の内容からもそれが裏付けられた。この点に関しては、ファタハが先導したPLOとヨルダンの再接近(1970年代末から始まり、1980年代初頭に最も接近した)との関係から、中東地域全体の政治環境の変化を踏まえた上で検討すべき点である。この課題のもと、現在論文を執筆し投稿中である。 以上の研究成果の一部は、『日本中東学会年報』(学会誌)や『相関社会科学』で論文として発表したほか、日本中東学会年次大会(大阪)、韓国中東学会国際シンポジウム(韓国・ソウル)、イスラーム地域研究国際会議(パキスタン・ラホール)など国内外の研究大会で口頭およびポスターで報告している。また本年度は横浜市高校地歴科研究会や公開シンポジウム、高校生を対象としたワークショップなどで、パレスチナ問題を中心とした中東情勢に関して適宜報告し、日本社会における中東地域への理解の促進に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アラビア語による証言の収集と未刊行資料の収集に著しい進展が見られた。特に後者に関しては、地方資料館に保管されていた大衆蜂起インティファーダ指令文書のコレクションを発見したことで、より地域の視点に根ざした大衆蜂起の姿を捉えることが可能となった。この点に関しては来年度の研究のなかで重点的に取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の3点において研究を推進する。 第一に、平成25年度の調査で収集した未刊行資料の内容分析を継続して行う。この成果は平成26年度日本中東学会年次大会(報告受理済み)などで報告予定である。 第二に, ヘブライ語文書資料の収集がいまだ不十分である。このため夏期に再度現地調査を実施する予定である。 第三に、地域のなかで展開される政治活動の変遷と同時代的に並行して大きく変化する国際情勢の関係性から、より地域全体に敷衍した形で分析を行ない、その成果を論文として学会誌や学術雑誌に投稿する。
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Research Products
(6 results)