2012 Fiscal Year Annual Research Report
民族的モノの再生と保存に関わる人類学的研究-トルコ絨毯の修繕と展示を中心にして
Project/Area Number |
12J08441
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
田村 うらら 国立民族学博物館, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化人類学 / モノ / 展示 / 保存 / 布 / 絨毯 |
Research Abstract |
日本学術振興会特別研究員(PD)として、上記研究課題に3年かけて取組むべく、その初年度を、国立民族学博物館(以下、民博)を研究従事機関とし、関本照夫特任教授(当時)に受入れをお願いした。当該年度の具体的な研究活動の主なものとしては、理論や事例を中心とする文献研究、論文執筆活動、現地調査、および単著出版に向けた準備作業が挙げられる。 民博においては、関本教授に逐次ご指導を賜ったことの他に、文献収集や共同研究会およびシンポジウム等への参加、関連企画展の観覧などを通して、有意義な意見・情報・資料などを得た。特に、「モノの人に対するエイジェンシー性」への再考を促す契機を得られたのは貴重であった。 成果発表の最大のものは、単著出版である。8月頃、期待より約1年早く出版助成が内定したため、予定を繰り上げて単著を年度内に出版するに至った。その準備過程で、文献等の精読等をとおしてさらに理論的な鍛錬を行ない、当研究課題と共通する課題について大いに前進があった。論文については、今年度発表に至ったものは、当研究課題の範疇ではなかったが、7月にSenri Ethnological Studiesに英語論文"Turkish Carpets in Motion : The Various Phases of Local Consumption and Incidental Commoditization"を寄稿し、来年度掲載予定となっている。 また、5月と3月に延べ5週間程度のトルコ現地調査を行ない、絨毯修繕師や絨毯商にたいする観察・インタビュー、博物館等訪問などを通して、民族工芸の一である絨毯の保存や展示に関わる現状について子細な情報を得た。 以上、展示と保存という営みを中心としながらも、広くモノ研究を人類学的に展開することの意義と多角的視点について、今後に繋がる多くの示唆を得ると同時に逐次成果発表に生かすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初2年目に行なう予定であった、単著出版が、上記の事由により1年繰り上がったために、予定していた論文の執筆が次年度に先送りになった。また、当研究課題に関わるフィールドワークもやや短期間で行なわざるを得なかった。とは言え、一大事業である単著出版を1年目である当該年度中に成し遂げられたことは、本研究課題にとって大きな成果であり、順序が前後したものの3年間の当初計画に照らせば、おおむね順調に進展していると評してよいと自認する。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、研究計画の1年目と2年目の内容に若干の入れ替えが必要となった。具体的には、翌25年度は、引き続き理論の鍛錬を行なうことと並行して、フィールドワークを入念に行なう。また、労働交換や協働についての人類学的論文を査読付き学術誌に寄稿する予定である。
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Research Products
(1 results)