2013 Fiscal Year Annual Research Report
民族的モノの再生と保存に関わる人類学的研究-トルコ絨毯の修繕と展示を中心にして
Project/Area Number |
12J08441
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 うらら 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化人類学 / モノ / 展示 / 保存 / 布 / 絨毯 |
Research Abstract |
採用初年度(前年度)に、単著出版を最重要・最優先課題として取り組んだ成果として、今年度はじめに、単著『トルコ絨毯が織りなす社会生活――グローバルに流通するものをめぐる民族誌』が出版される運びとなった。 採用2年目である今年度は、本研究課題に関わる国外フィールドワークを集中的に進めるべく、8-9月、12月、2-3月にトルコおよびドイツ等でのまとまった調査を予定していた。ところが体調の都合でいずれもやむを得ず海外調査を断念することとなった。その代わりの調査として、国内での絨毯商、絨毯修繕業者等の聞取り調査を、京都・東京・名古屋の各地で行なった。具体的には、トルコ系およびペルシャ系の絨毯商の日本における販売・需要の時代的変遷と現在の販売・顧客ネットワークについて重点的に調査した。また、複数回取材を行なった関係者からは、日本国内や輸出元の絨毯修繕師たちとの関係や、彼らの実際の修繕過程についても情報を得られ始めている。 前年度および今年度前半に、トルコ各地の博物館や、ニューヨーク・メトロポリタン美術館等、アンティーク絨毯コレクションのある美術館・博物館を訪問し、資料や修繕・保存・展示に関わる情報を可能な限り収集した。本年度は、それらおよび関連するインターネットサイト、書籍・カタログ等の精査分析を随時進めてきた。また、前年度末のトルコ調査において収集したトルコ国内絨毯修繕の中心地、アクサライ県スルタンハンの歴史・産業等の資料およびフィールドワークの聞取りデータ等の資料分析を行なった。加えて、研究課題に関わるより理論的検討として、消費社会論・モノ研究・博物館展示に関わるポリティクスの問題・経済学等の幅広い文献資料収集と精読を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、初年度に不足していた海外フィールドワークを入念に行なう予定ではあったが、妊娠・出産のため、海外渡航をほとんど実現させることができなかった。そのかわりに、日本国内のフィールドを積極的に開拓し、また手元にある資料分析を進めたが、当初の計画からは幾分遅れを取ったと自覚している。
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Strategy for Future Research Activity |
産休・育休明け後の一年間において、本年度達成できなかった海外フィールドワークを行なうとともに、本研究の集大成としての論文を執筆する。産休・育休中の今から、地道に資料分析や文献精査など、その準備を可能な限り進めることによって、復職後に最大の成果を出せるようにしたい。
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