2013 Fiscal Year Annual Research Report
エラーからの学習におけるドーパミン神経系の機能的役割の解明
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12J08448
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
川合 隆嗣 関西学院大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 罰 / 学習 / サル / 神経細胞 / 前部帯状皮質 / 外側手綱核 / 電気生理 / 報酬 |
Research Abstract |
罰などの嫌悪事象を回避することは動物の生存にとって極めて重要である。脳内の前部帯状皮質(anterior cingulate cortex, ACC)と外側手綱核(lateral habenula, LHb)は嫌悪事象の生起によってニューロン活動が上昇することが知られており、それぞれの活動は嫌悪事象を回避する学習の実現にとって重要であることが報告されている。本研究課題では、脳内の学習プロセスにおけるACCとLHbの相互の役割を明らかにするため、逆転学習課題を行なっているマカクザルの二領域からニューロン活動を記録し、その違いの解析を行なっている。当該年度(平成25年度)における実験では、二頭の被験体(サル)から神経活動を記録し終えるなど、データの信頼性・再現性を担保するに足る、十分なデータを得ることができた。具体的には、まず以下のような試行錯誤学習課題をサルに学習させた。この課題では、サルは二つのターゲットのうち、どちらか一方を選択するように求められる。一方のターゲットを選択すると50%の確率で報酬が与えられるが、もう一方のターゲットを選択しても報酬は与えられない(無報酬)。報酬をもたらすターゲットの位置は数十試行の間固定され、その後、明示的なインストラクションなしに左右の位置が入れ替わる。この課題で、サルは、報酬をもたらすターゲットの位置が入れ替わるたびに、そのターゲットを選ぶよう、選択を適応的に変化させた。この課題を遂行している二頭のサルのACCとLHbのニューロンから神経活動を記録したところ、ACCニューロンの無報酬に対する活動が、サルの次の選択を予測するような振る舞いを見せた。すなわち、ACCの活動がより強い場合に、サルは次の試行で選択するターゲットを変える傾向にあった。一方、LHbのニューロンではサルの選択を反映するような活動は見られなかった。このような活動の違いがACCとLHbの間に存在していることはこれまで知られておらず、非常に有意義な発見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該分野の研究では、データの信頼性と再現性を保証するために通常二頭分の被験体のデータを得ることが望まれる。当該年度では、二頭分の実験を完了させた上、論文の執筆まで開始することができたが、これは大きな進展であったと言える。また、この実験から得られた成果を国内外の複数の学会で発表したところ、多くの反響が得られ、口頭発表を行なった学会大会においては最優秀発表賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、データの解析結果を洗練させ、論文を完成させることを目的とする。可能であれば、複数の論文を執筆したい。また、従来通り、得られた成果を国内外の学会等で発表し、様々な意見交換を行なうことで研究の質を高めていきたいと考えている。以上の進行状況に応じて、補足データを得るための実験を行なうなど、本研究をより洗練させることにも積極的に取り組みたい。
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Research Products
(4 results)