2012 Fiscal Year Annual Research Report
摂食リズムに同調する新しい脳内時計システムの分子解剖
Project/Area Number |
12J08473
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
布川 莉奈 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 概日時計 / 摂餌同調時計 / 制限給餌 / 視床下部内側基底部 / 給餌予知行動 / 時計遺伝子 / マイクロアレイ解析 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
多くの生物は約24時間周期で自律的に発振する概日時計をもち、次の24時間サイクルを予知できるという有利性により適応進化したと考えられる。この概日時計は、外界の明暗サイクルに同調する、動物と植物に共通した生理機能である。一方、動物においては、飢餓など食餌条件の変化に対応するための時計システムを備えており、この時計が作動することにより、餌の得にくい危急の事態に陥っても限られた餌の時刻を予知できる。このように動物にとって、食餌の時刻を利用してリセットできる時計機構は、生存競争を生き抜く上で必要不可欠であったと考えられる。本研究では、動物において特異的に発達した「摂餌同調時計」のメカニズムの解明を目的とし、その候補脳領域といわれている視床下部の内側基底部(MBH)に注目して分子メカニズムの解明を目指す。 本年度は、食餌に直接応答する時計関連遺伝子E4bp4およびDec1それぞれのノックアウトマウスに対し、明期の決まった時刻にのみ餌を与える制限給餌を行って給餌時刻を予知する行動を示すか否かを調べた。その結果、いずれのマウスも野生型マウスと同様に給餌時刻を予知できたことから、これらの時計関連遺伝子が摂餌時計遺伝子として機能する可能性は低いと考えられた。 一方、明期または暗期の決まった時刻にのみ餌を与えるという2つのタイプの制限給餌実験を野生型マウスに対して行い、これらのマウスから様々な時刻にMBHを単離してマイクロアレイ解析に供した。MBHにおいて給餌時刻に発現が高い遺伝子を絞り込んだところ、明期および暗期の給餌時刻に共通してmRNAの発現量が上昇する53個の遺伝子が同定された。逆に、給餌時刻に発現が低い遺伝子を絞り込んだところ、両給餌条件に共通してmRNAの発現量が低下する遺伝子が173個同定された。このように、給餌時刻に応答して発現が変動する遺伝子を網羅的に探索することにより摂餌時計遺伝子の候補を絞り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した通り、食餌に直接応答する時計関連遺伝子E4bp4およびDec1それぞれのノックアウトマウスに制限給餌を行い、予知行動の解析を行った。野生型マウスに対して明期または暗期の制限給餌を行い、様々な時刻にMBHをサンプリングしてマイクロアレイ解析に供して摂餌時計遺伝子の候補を絞り込んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
摂餌時計遺伝子の候補がMBHのさまざまな神経核においてどのような発現プロファイルを示すのか、を解析する必要がある。そこで、レーザーマイクロダイセクションを用いて各神経核を分取し、マイクロアレイに供する。 また、これまでにMBHの時計が位相シフトする刺激条件を見出しているので、細胞時計の単一細胞レベルのリアルタイム-モニタリング系を用いてMBHの時計を可視化し、それぞれの神経核の時計位相を比較する。
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Research Products
(1 results)