2012 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子ドットを用いた電子・光子相互作用制御と量子情報処理への応用に関する研究
Project/Area Number |
12J08494
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
都木 宏之 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子ドット / フォトニック結晶 |
Research Abstract |
量子コンピュータなどの大規模な量子演算の実現に向けては、量子演算素子の集積性を高める必要がある。半導体量子ドット・フォトニック結晶結合系は、半導体中の狭い範囲に量子ビットと光の相互作用系を集積化できる点で優れている。また、集積化により多数の光デバイスが必要になるが、従来この系で用いられてきた波長1μm帯ではなく通信波長帯の光を用いることで、既存の光通信用デバイスを利用することができ、本分野の研究の加速及び応用研究の進展が期待できる。本研究では、通信波長帯での量子ドット・フォトニック結晶ナノ共振器結合系を構築し、複数の量子ドット・共振器結合系を含む系を作製することを目的としている。 本年度は、まず、本研究で用いる共振器構造の設計を行った。本研究で重要となるQ値に加え、共振器モードと上方向の対物レンズの光結合効率を高める設計を行い、H1型共振器でQ値と結合効率の両方を同時に向上する設計が可能であることを計算・実験の両方で確認した。さらに、本設計手法を一般化し、他の共振器構造にも応用可能であることを示した。本成果は、本研究だけでなく二次元フォトニック結晶ナノ共振器の設計全般において有用な成果である。 さらに、設計した共振器に1.3μm通信波長帯量子ドットを内包する構造を作製し、量子ドット内の励起子状態と共振器モードの強結合状態を観測した。また、強結合状態にある共振器モードにレーザー光を共鳴的に照射することで、増強された光シュタルク効果が生じ、量子ドットのエネルギーを光子10個程度で変化させることに成功した。さらに、二つの共振器モードを有するH1型共振器を使い、一方の共振器モードで増幅された光シュタルク効果によって、他方の共振器モードと量子ドットからなるポラリトンのエネルギーを変化させることに成功した。本成果は少数光子による低消費エネルギー全光スイッチ実現につながると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子ドット・フォトニック結晶ナノ共振器結合系を通信波長帯に展開する点では非常に順調に研究が進展している。当初の計画であった強結合状態の観測や共振器増強光シュタルク効果の観測に加え、同効果を利用したポラリトン状態のエネルギー制御を実現し、全光スイッチ動作の実証に迫っている。一方で、量子ドットの波長の電界制御及び単一光子発生の実験は、電界制御用のドープ済み基板の入手遅れ及び励起子状態の安定性不足のために進捗が遅れている。以上を総合的に判断し、上記の達成度とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、最大の課題は量子ドット内励起子の状態を安定的に維持できないことである。本課題を解決するために、電界印加による量子ドット内部及び近傍の荷電状態安定化を計画している。また、電界印加のためのドープ済み基板の入手が遅れていたが、現在試作評価を行い、要求を満たす品質のものが近く入手できる見込みである。本基板を用いて、励起子状態の安定化及び研究計画にある電界制御の両方を達成する予定である。これらの解決策とこれまでに確立した通信波長帯量子ドットとフォトニック結晶ナノ共振器の結合系の作製・計測技術を組み合わせ、前光スイッチ動作の実証とコヒーレント単一光子発生、複数共振器の集積化に取り組む。
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