Research Abstract |
抑うつ者は思考抑制に失敗しがちであり, その結果として頻繁に侵入思考を経験することが明らかにされてきた。さらに, 侵入思考が抑うつの重篤化・慢性化の原因となる可能性があることから, それを予防するために, 抑うつ者の経験する侵入思考の発生メカニズムについて検討を行った。特に, 本年度は, 気晴らしとメタ認知的信念に注目した。 まず, 本年度は, 思考抑制のために行われる気晴らしが, 抑うつと関連する可能性について検討を行った。その結果, 抑うつ者は, 集中的気晴らしを行っても思考を制御できないという内容の信念である"逆説的効果"に関するメタ認知的信念を強く保持しており, さらに, "逆説的効果"に関するメタ認知的信念の確信度が思考抑制時の侵入思考頻度を高めるという媒介過程が存在することが明らかになった。 次に, 抑うつと気晴らしに対する動機づけの関連について検討を行った。その結果, 非抑うつ者は, ネガティブな出来事に関する思考を抑制しようとするか否かに関わらず, 買い物などの気晴らし行動への動機づけが高いのに対し, 抑うつ者は, 気晴らし行動への動機づけが高まりにくいことが示された。ただし, ネガティブな出来事に関する思考を強く抑制しようとする場合には, 抑うつ者においても気晴らしへの動機づけが高まることが示された。 また, 本年度は思考抑制に関するメタ認知的信念についての検討を行った。その結果, 思考抑制に関するメタ認知的信念が, "気晴らし", "逆説的効果", "逃避", "集中"という4つの内容から構成され, 特に, 思考抑制が逆に抑制対象に関する思考頻度を高めるという内容の"逆説的効果"に関するメタ認知的信念の確信度が高いほど, 思考抑制中の侵入思考頻度が高まることが示された。
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