2012 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック領域にあるスピンクロスオーバー錯体創生と新規量子効果
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12J08498
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西 晃史朗 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピンクロスオーバー / 共同効果 / イミダゾール / クラスター |
Research Abstract |
本研究は、メゾスコピック領域にあるSCO錯体の創生と新規量子効果の実現を研究目的とする。SCO現象は分子間の共同効果によりヒステリシスや多段階スピン転移が出現する。ところが、分子間の共同効果とスピン転移パラメーター(転移温度、ヒステリシス幅、多段階スピン転移)との相関は解明されていない。これまでに多数の次元性SCO錯体や単分子のSCO錯体が合成されているが、その挙動は統一性に欠け、充分には理解されていない。本研究では4核クラスターSCO錯体の構成要素を変化させて系統的な合成をおこない、量子効果、共同効果が顕著な錯体を実現するとともに、光、熱とスピン挙動の関係解明に取り組む。今年度は以前合成した[Fe(HL^<n-Hexy1>),]Cl・PF_6をもとにカウンターイオンを変更した錯体[Fe(HL^<n-Hexy1)_3]Cl・Y(Y=AsF_6(1),SbF6(2)を中心に研究を行った。合成された錯体はいずれもPF_6錯体と同様の4核クラスター構造をとっており、カウンターイオンの変更による構造の変化は見られなかった。磁化率を測定した結果、どちらの錯体も不完全なスピン転移を示した。1は完全スピン転移の約4分の3、2は約2分の1のスピン転移を示しており、この結果はクラスター構造に内包されたカウンターイオンの影響であると考えられる。カウンターイオンのサイズはPF_6<AsF_6<SbF_6の順で大きくなっており、クラスター構造内の隙間もこの順で小さくなるため、SCOを起こすためのスペースが狭くなって不完全なスピン転移を示したのではないかと思われる。本研究の結果からカウンターイオンサイズが小さい方がより多段階のスピン転移を示す傾向が明らかになったため今後はPF_6イオンよりもサイズの小さいClO_4イオンやBF4イオンを用いた錯体を合成し、より多段階のスピン転移の発現、大きなヒステリシスの発現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規4核クラスター構造の錯体の合成やスピン転移挙動のチューニングに対する知見は着実に進展しているものの、既に合成した錯体の物性測定、特に各SCO段階での構造解析が低温時の結晶のハンドリングの難しさから難航しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究結果から、カウンターイオンサイズが小さい方がより多段階のスピン転移を示し、ヒステリシスを伴った急激なスピン転移を起こす傾向が明らかになったため今後はPFsイオンよりもサイズの小さいClO_4イオンやBF_4イオンを用いた錯体を合成し、より多段階のスピン転移の発現を目指す。また、2メチル-4-ホルミルイミダゾールとベンジルアミンを配位子に用いた錯体も4核クラスター構造をとることが分かったので、イミダゾールの置換基やアミン部位の炭素鎖の変更によってスピン転移のチューニングを行い優れたスピン転移挙動の獲得を目指す。
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Research Products
(3 results)