2012 Fiscal Year Annual Research Report
TGFβ-SmadシグナルによるヘルパーT細胞の分化転換と免疫抑制機構の解明
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12J08511
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田宮 大雅 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | TGF-β / Smad2/3 / Th9 / IL-9 / T細胞 |
Research Abstract |
24年度はTGF-6シグナルによる免疫調節機構について解析を行った。TGF-6は抑制性T細胞Tregの誘導やサイトカインIL-2の産生抑制に働き、免疫を負に制御している反面で、多発性硬化症や炎症性腸疾患を引き起こしうるTh17細胞を誘導し、免疫を亢進する働きも持っている。さらに近年になって新しく発見されたIL-9産生T細胞(Th9)の分化にもTGF-βが必要であることが報告されている。IL-9はアレルギー性喘息やアトピー性皮膚炎、寄生虫感染に関わっているサイトカインである。Th9細胞はほかのヘルパーT細胞の分化と同様に抗原提示細胞からT細胞受容体の刺激を受け取り、さらにIL-4およびTGF-βの刺激によって分化が誘導される。しかしながらTh9分化において、未だ詳しいメカニズムはわかっていない。そこで我々はT細胞におけるTGF-Bシグナルの全容解明のため、Th9分化誘導におけるTGF-β下流シグナル分子であるSmad2/3の役割について研究を行ったところ、Smad2欠損Smad3ヘテロ(2KO3He)マウスT細胞ではほぼ完全にIL-9産生能が失われていた。したがってSmad2/3はIL-9産生において必要不可欠であることが明らかになった。さらにTh9のIL-9 promoter上において遺伝子転写促進性のヒストンH3アセチル化(AcH3)やヒストンH3リジンK4トリメチル化(H3K4me3)がWTと比較して2KO3He Th9ではAcH3およびH3K4me3が大幅に減弱していることが確認された。In vivoにおいてIL-9はアレルギー性喘息の病態悪化に関与していることから、T細胞特異的Smad2/3欠損マウス(Lckcre2KO3He)を用いてアレルギー性喘息のモデルであるOVA誘導性喘息モデルを行った結果、WTと比較し、Lckcre2KO3Heマウスにおいて喘息症状の軽度化とIL-9産生の減少が確認された。Lckcre2KO3HeマウスではT細胞由来のIL-9産生低下によって喘息症状が軽度になっていることが考えられた。 以上より、TGF-β-Smad2/3シグナルはTh9分化に必要不可欠であり、転写活性型のヒストン修飾を引き起こすことによってIL-9産生に働いていることが明らかになった。免疫抑制性サイトカインとして知られるTGF-β-Smad213シグナルが炎症性の細胞であるTh9分化に関わっていることは新たな発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しいT細胞サブセットであるTh9分化におけるTGF-β-Smad2/3経路の必要性やIL-9産生メカニズムを明らかにすることができた。さらにこの内容については現在論文執筆中であるため、順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらにTGF-βシグナルの全容解明に努め、最終的には本研究の到達目標であるエフェクターT細胞から制御性T細胞へのダイレクトリプログラミングの方法を発見する。具体的にはこれまでに得られた分子を用いて、エフェクターT細胞からダイレクトに抑制性T細胞にリプログラミングする方法を開発する。レトロウイルスベクターに候補因子を搭載したウイルスを作製しin vitroでエフェクターT細胞を抑制性T細胞様の細胞に転換することを試みる。
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Research Products
(3 results)