2012 Fiscal Year Annual Research Report
陸面・雲微物理データ同化システムによるアジア域の降水予測可能性の向上
Project/Area Number |
12J08545
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀬戸 里枝 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 陸面データ同化 / 雲微物理データ同化 / 降水予測 / 衛星観測 / アジア域 |
Research Abstract |
本研究課題は、アジア域を対象に陸面・雲微物理の衛星観測データ同化システムの高度化を通して、洪水予測・警報情報等に有効な高い精度での豪雨予測を可能とすることを目的としている。 高精度の降水予測には雲の衛星観測の同化が有効だが、陸上の雲の観測には、陸面の強い射出を背景情報として適切に取り除くことが必要であるため、陸面データ同化が適切に行われて初めて、陸上の雲微物理データ同化が可能となる。 平成24年度は、データ同化システムの高度化の第一段階として、気象予測モデルWRFを結合した陸面データ同化システム(LDAS-WRF)、陸面・雲微物理データ同化システム(CALDAS-WRF)の構築を順に行った。本システムに大気ドライバーとして採用したWRFは、様々な有用なオプションやパッケージを含み、現在世界で最も汎用性の高い気象モデルの一つである。他のモデル等との結合にも適したデザインで開発され、継続的な改良もなされており、今後の本システムの高度化に本質的に重要な要素となる。 構築したシステムの評価をチベット高原での数値実験と現地観測により行った。LDAS-WRFの評価のために一ヶ月の対象期間で数値実験を行い、同化を行わない実験と現地観測との比較から、LDAS-WRFで陸面データが適切に同化された。陸面状態と地表面フラックスの改善を通して大気プロファイルの再現も改善されることが示され、学会誌や学会で発表した。 CALDAS-WRFの評価では数日間の対象期間で数値実験を行い、衛星観測と実験結果の比較から、雲の分布が改善され、それによって降水と降水をForcingとした土壌水分の再現性にも改善が見られた。更に、まだ緒に就いた段階であるがCALDAS-WRFを日本の関東域に適用することを試みている。 尚、以上の研究に並行して、陸面データ同化システムを解析に利用し、新たな理解を得る可能性を示すために、チベット高原において大気加熱の解析研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的「アジア域での降水予測精度の向上」を達成する手段である、「衛星観測による陸面と雲微物理データを数値気象予測モデルに同化するシステムの構築・高度化」の基礎となるシステムの構築は完了しており、評価も行った。本システムはすでに陸面と大気の再現精度を向上させ、降水についても部分的ではあるが再現性が向上した。システムの適用範囲の拡大と更なる改良・高度化によって、目的が達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
比較的シンプルな地表面被覆の地域での陸面・雲微物理データ同化システムの有効性は確認できたので、システムをより複雑な地表面被覆の関東域に適用することを試みたが、陸上の雲が適切に観測できないという問題が発生した。都市を含む複雑な地表面被覆では陸面の射出が高く、複雑であることが原因と考えているが、本システムの都市域への適用は本研究課題の目的からも重要であるため、今後この課題に取り組む予定である。問題の原因を特定し、衛星観測を同化する際の放射計算や、雲微物理スキームに改良を加えることで問題を解決するとともに、更なる予測精度の向上を目指す。
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