2012 Fiscal Year Annual Research Report
大環状二核遷移金属錯体をホスト成分に用いる超分子の合成と動的機能
Project/Area Number |
12J08562
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
土戸 良高 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超分子化学 / ホスト分子 / 分子内水素結合 / 環化反応 |
Research Abstract |
本研究では,ホスト-ゲスト包接体の形成を動的に制御できる新規環状錯体の開発を目指し,繰り返し耐性の高い刺激応答であるメタロセンの酸化還元を利用する計画を立てた.具体的には,正対する2つのメタロセン部位を環架橋部位で連結した構造をもつ環状分子を設計した. 本年度は環架橋部位の合成に成功した.さらに2つの9-(エチニル)アンスリル基を環架橋部位に結合させた分子(4,6-bis{5-(anthracen-9-ylethynyl)-2-hydroxyphenyl}-2-hexy1 pyrimidine(1-OH))を合成し,それが電子欠損性のゲスト分子を効率的に包接する分子ピンセットとして機能することを見出した.この1-OHは3-bromopyrimidineを出発物質として5段階の反応で合成した.単結晶X線構造解析によって,1-OHは2つのアンスリル基が約7Aに固定されたピンセット型の配向であることが明らかとなった. CDC13中での1-OHの種々のゲスト分子に対する包接能を1H NMR滴定によって評価した.その結果,1-OHはTNF(trinitrofluorenone)を最も強く包接し,その包接定数(瓦)は2100M^<-1>であった.これは既報(K_aく1000M^<-1>)よりも高い値であった.1-OHは環架橋部位の分子内水素結合によってピンセット型の配向を保持し,効率的なゲスト包接を達成している.つまり,この結合を外部刺激によって切断すれば,ピンセット型の配向を保てなくなり.ゲストが解離することが予想される.実際に1-OHのCDC13溶液に100等量以上のCF3COOHを添加することで配向変化が確認された.しかし,酸存在下で1-OHのTNFに対する包接能は酸無添加の場合と同値であった.これは環架橋部位の水素結合が強いためであると考えている. このように本年度は,環架橋部位が分子内水素結合によって配向を保持できることを明らかにした.これは目的の環状錯体においてもゲスト分子を強く取り込めることを示唆している.さらに環架橋部位の応用として,歯車分子(トリプチセン)が複数個噛み合った化合物の合成にも成功している.一方,目標の環状錯体の前駆体である有機環状分子の合成も試みている.現在,質量分析によって生成を確認したが,その単離には至っていない.環化反応の条件検討およびメタロセンの導入は来季の研究課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的の環状錯体の構成成分である環架橋部位と9-(エチニル)アンスリル基を結合させたピンセット型分子を合成し.それがゲスト分子を強く包接することを明らかにした.この結果は,本研究の目的物で環状錯体のゲスト包接に関する重要な知見でもある.また目的物の前駆体である有機環状体も反応混合物として得られているため,本年度の研究は当初の計画通りおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
環化反応の条件を検討することによって有機環状体を収率よく得る.さらにメタロセン化を行うことで目的の大環状二核遷移金属錯体を合成する.そして,そのゲスト包接能を評価する.次の目的であるインターロック化合物の合成も検討する. 一方,本年度合成に成功した環架橋部位は,分子内水素結合によって分子の配向を制御することができることがわかった.この特徴を活かした別の系(分子ギアなど)への応用も進めていく.
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Research Products
(9 results)