2013 Fiscal Year Annual Research Report
大環状二核遷移金属錯体をホスト成分に用いる超分子の合成と動的機能
Project/Area Number |
12J08562
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
土戸 良高 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超分子化学 |
Research Abstract |
本研究では, ホストゲスト包接体の形成を動的に制御できる新規超分子化合物の開発を目指し, 有機金属化合物(メタロセン)の酸化還元を利用する計画を立てた. 具体的には, 正対する2つのメタロセン部位を環架橋部位(4,6-bis (2-hydroxyphenylpyrimidine)で連結した構造をもつ環状分子を設計した. 昨年度(一年目)の研究では, 環架橋部位の合成に成功し, さらにこれに2つの9-(エチニル)アンスリル基を結合させた分子が電子欠損性のゲスト分子を効率的に包接する分子ピンセットとして機能することを見出した. 一方, 目標の環状錯体の前駆体である有機環状分子の合成も試みた. 質量分析によって分子の生成は確認したが, その単離には至っていなかった. 本年度(二年目)の研究では, 合成経路を改良し, 多段階の有機合成によって大環状構造をもつ有機分子を単離することに成功した. 一方, 本研究の環架橋部位の配向が外部刺激(フッ素アニオン(F-)の添加)によって容易に変化できることを見出し, これを応用した研究も発展させた. 具体的には, 1)昨年度の分子ピンセットにF-を添加すると包接したゲスト分子を放出することを見出した. 分子ピンセットにF-を添加すると, 環架橋部位の分子内水素結合が切断されて, ピンセット型の配向を保てなくなり, その結果, ゲストが解離した. 2)環架橋部位に歯車状分子(9,10-ジエチニルトリプチセン)を結合させた分子ギアを合成した. この分子は最大6ユニットの歯車が噛み合ったものまで合成しており, さらにこの噛み合いをF-の添加によって制御することにも成功した. 以上のように本年度の研究では, 昨年度合成できなかった環状構造をもつ有機分子の合成に成功し, さらに環架橋部位の配向が外部刺激に応答して変化すること見出し, これを応用した研究も推進させた. 一方で, 当初の研究計画にある有機金属化合物の酸化還元特性を活かした超分子構造の動的な制御には至っておらず, これは来年度の研究課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では, 当初の研究計画にある環架橋部位をもつ大環状分子の合成に成功し, これに加えて昨年度合成した分子骨格を応用して新たな研究分野(分子ピンセット・分子ギア)も開拓した. 以上より本年度の研究は, 概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は有機化合物の超分子構造を外部刺激(フッ素アニオンの添加)によって動的に制御することに成功した. このような外部刺激によって大幅な配向変化をおこす有機化合物は珍しい. そこで来年度は合成した化合物について研究を推進するとともに, 有機化合物よりも応答性の良い有機金属化合物の酸化還元特性を活かした超分子構造の動的な制御を目指す.
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Research Products
(6 results)