2012 Fiscal Year Annual Research Report
腸管内常在菌による病原細菌の毒素産生抑制機構の解明
Project/Area Number |
12J08629
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
市村 穣 徳島大学, 医科学教育部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Bacteroides / Clostridium difficile / 偽膜性腸炎 / Toxin B / トランスポゾン / 莢膜多糖 / 細胞毒性 / 自己溶菌 |
Research Abstract |
腸内常在菌叢を構成する主要な菌種であるBacteroides thetaiotamicron (BT)は、Clostridium difficile (CD)の細胞毒性を抑制する。このメカニズムを明らかにするため、BTにおいてトランスポゾン(Tn4351)挿入変異ライブラリーのスクリーニングを行い、CDの細胞毒性に対する抑制作用を消失した変異株を検索した。その結果、莢膜多糖合成や糖加水分解酵素の遺伝子にトランスポゾンが挿入した変異株では抑制効果が消失することを明らかにした。この結果はBTの糖代謝産物がCDの細胞毒性に対する抑制作用に関与している可能性が考えられた。BTのCDの細胞毒性に対する抑制効果がin vivoでも認められるか否かを検討するため、無菌マウスの腸管にBTとCDを同時に定着させ、マウスの死亡率、盲腸内Toxin Bの定量、および盲腸内容物のグラム染色像を比較した。その結果、BTの野生株とCDを共感染させた群では80%が生存したのに対し、葵膜多糖PS-4の欠損株を投与した群の生存率は20%であり、BTのCDの細胞毒性に対する抑制効果がin vivoにおいても認められた。この結果は、また、莢膜多糖PS-4がこの抑制作用に関与していることを示している。これらの群において盲腸内でのToxin B量をELISA法により定量した結果、BTの野生株とCDを共感染させた群のToxin B量はPS-4欠損株とCDを共感染させた群と比較して有意に低かった。盲腸内のグラム染色像を比較すると、BTの野生株とCDを共感染させた場合、CDはグラム陽性に保たれる菌体が多く、PS-4欠損株と共感染させた場合にはCDの多くの菌体がグラム陰性に染色された。このことは、BTのPS-4がCDの自己融解を抑制することにより毒素の遊離を抑えていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は腸管内常在菌であるBacteroides thetaiotaomicronがClostridium difficileの細胞毒性を抑制するメカニズムを解明するため、その作用の責任遺伝子の探索を行うものである。トランスポゾンをゲノムにランダムに挿入した変異株のスクリーニングにより、Bacteroides thetaiotaomicronの糖代謝を担う遺伝子群がClostridium difficileの細胞毒性抑制作用に関与していることを明らかにすることができたことから、研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はBTのCDの細胞毒性に対する抑制作用のメカニズムをさらに詳細に解析するため、抑制作用に関わるPS-4の構造決定を行う。BTは7種類の莢膜多糖を合成することが知られているため、PS-4以外の6種の莢膜多糖の合成遺伝子領域を欠損させた変異株を作製する。この変異株より莢膜多糖を精製し、その構成糖や構造を決定する。 PS-4のClostridium diffcileに対する自己融解阻害作用やCD毒素の自己分解誘導作用の有無についても検討を進め、研究の推進を図る。
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Research Products
(5 results)