2014 Fiscal Year Annual Research Report
炭素系超伝導体の強相関第一原理計算:電子電子相互作用と電子格子相互作用の拮抗
Project/Area Number |
12J08652
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 悠祐 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超伝導 / フラーレン / 電子格子相互作用 / 強相関電子系 / 第一原理計算 / downfolding / 動的平均場理論 / モット転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルカリ金属をドープしたフラーレン化合物の超伝導について第一原理による研究を行った。この系においては、s波超伝導に隣接してモット絶縁体相が存在するが、それに対する統一的理解はこれまでなされてこなかった。本研究においては、第一原理計算により、フェルミエネルギー近傍のバンドと格子振動(フォノン)の自由度を含んだ低エネルギー有効ハミルトニアンを導出した。有効的な電子間相互作用はクーロン相互作用(斥力)とフォノンを媒介とする相互作用(引力)の和で表される。密度密度型の相互作用は前者がはるかに大きいのに対し、交換相互作用においてはフォノン媒介の引力が上回り、有効的に負の交換相互作用及びペア・ホッピング相互作用が実現していることが第一原理計算により明らかになった。 得られたハミルトニアンを拡張動的平均場理論で解析することにより、s波超伝導相にモット絶縁体相が隣接した相図を理論的に再現することに成功した。また、超伝導転移温度に関しても理論により得られた最高転移温度は28 K程度と、実験の35 Kを非常によく再現することがわかった。詳細な解析により、超伝導の本質は 1. 負の交換相互作用に対応して軌道間斥力が軌道内斥力が大きくなることによる軌道内ペアの生成 2. ペア・ホッピング相互作用による軌道内ペアの他の軌道への散乱(スール・近藤機構) であることが明らかになった。負の交換相互作用が実現するのはフォノンの存在によるので、この超伝導にはフォノンが本質的な役割を果たしている。しかしながら、従来型のフォノン超伝導と違うのは、強相関効果が超伝導を助ける点にある。相関効果によって電子の運動エネルギーが減少することにより1の機構がより有効的に働くためである。よって、フラーレン超伝導体はフォノンと電子相関が協力しあって高温s波超伝導を実現しているような全く新しいタイプの超伝導体であることがわかった。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(10 results)