2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規ペルオキシダーゼDyPの反応機構を分子レベルで明らかにする
Project/Area Number |
12J08664
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 徹 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | DyP / ペルオキシダーゼ / X線結晶構造解析 / 基質結合部位 / アスコルビン酸 |
Research Abstract |
本研究では、Dye decolorizing peroxidase(DyP)-type peroxidaseの基質結合部位の解明を目指した。 そこでこのファミリーに属する酵素DyPを用いて、(1)DyP-基質複合体X線結晶構造解析、(2)大腸菌を用いた発現系の構築、を行った。 (1)麹菌を宿主とするDyPの発現系から精製したDyPを使用し、様々な基質についてソーキングによる複合体結晶化と共結晶化を試みた。その結果、2種類の基質、ascorbic acidと2,6-dimethoxyphenolについて、DyP-基質複合体のX線結晶構造解析に成功した。活性部位にあるヘムは分子内部に埋まっているが、分子表面とヘムは2つの空洞によってつながっている。そのうちの1つの空洞に、両基質とも結合していた。 この結合部位は、ascorbate peroxidaseに対するascorbic acidの結合部位とよく似ていた。本結果は、DyP-type peroxidaseにおける基質結合部位の初の報告である。さらに、両基質ともDyP-type peroxidaseのみならず、他のヘムペルオキシダーゼにも利用される基質である、という点で意義がある。 (2)麹菌を宿主とする発現系は変異体を作製することが出来ない。変異体を用いた生化学研究を行うために、大腸菌を宿主とするDyPの発現系を構築した。大腸菌内で発現したDyPはヘムを持っていなかったが、粗精製後にヘムを添加することで、活性を持ったDyPを精製することが出来た。精製DyPの分子量、円偏光二色性スペクトル、比活性、紫外可視吸収スペクトルは、麹菌を宿主とする発現系から精製したDyPと全く同じであった。そのため、大腸菌を宿主とするDyPの発現系の構築に成功したと判断した。現在、基質結合に関与するアミノ酸残基の変異体を作製し、活性の変化を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基質との複合体結晶構造解析が終了し、現在は変異体を用いた生化学的解析を進めている。また、触媒サイクルを明らかにするために、ストップトフロー分光光度計を用いた中間体の補足も進めている。これらを引き続き行うことで、研究の目的であるDyPの反応機構解明を行うことが出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の、変異体を用いた生化学実験、ストップトフロー分光光度計を用いた中間体の補足実験を継続する。
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Research Products
(1 results)