2012 Fiscal Year Annual Research Report
自由振動理論、及び素粒子物理学を応用した氷衛星の内部構造の決定
Project/Area Number |
12J08700
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
庄司 大悟 東京大学, 地震研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エンセラダス / 潮汐加熱 / 離心率 / 氷衛星 |
Research Abstract |
我々の太陽系において,太陽以外に活動が確認されている天体は3つ存在している.一つは地球であり,残りの二つは木星衛星のイオと土星衛星のエンセラダスである.この中で,エンセラダスは半径が250kmと非常に小さい.小型の天体は大きな熱を生み出すことができず,すぐに冷え固まってしまうはずであるが,エンセラダスは非常に活発に活動している.表面からは水蒸気や氷の粒を噴出し,約16GWの熱フラックスが観測されている.小型の衛星であるエンセラダスがなぜこのように活動しているのかは,ほとんど分かっていない.エンセラダスの活動メカニズムを研究することは,太陽系の小型の天体の理解において非常に重要となる.、 エンセラダスの活動を引き起こしている原因として潮汐加熱が提案されて来た.しかし,潮汐加熱は衛星の軌道や内部構造に非常に強く依存している.さらに,潮汐加熱によって,軌道や内部構造は変化する.つまり,潮汐加熱はエンセラダスの軌道や内部構造とフィードバックの関係になっている.このフィードバックシステムを考慮したエンセラダスの研究は行われていない.本研究は軌道や内部構造と潮汐加熱の相互作用を計算しエンセラダスの活動を詳細に分析することを目的とする. 今年度の研究として,伝導による熱輸送を仮定した氷層モデルを用いて,相互作用計算を行った.その結果,発生する熱量は観測値を十分に説明できなかったが,氷の厚さが周期的に変化し,内部に海が発生する条件が存在することが分かった.内部海が存在するかどうかは,エンセラダスの活動において非常に重要なポイントとなる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潮汐加熱の相互作用計算は複雑に絡み合っており,軌道や内部構造の変化の計算が面倒であったが,プログラムを実装し,実行することができた.しかし,設定するパラメータの数が多くなってしまい,検討の余地がある.以上の結果から,達成度としてはおおむね順調と結論づける.
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Strategy for Future Research Activity |
エンセラダスの加熱が周期的な変化を起こすことは非常に大きな研究成果であるが,離心率の値と加熱量の大きさが観測値とあっていない.そのため,今後の方針として,氷層に対流が発生する場合の検討を行う.対流が発生すると,温かい氷が上昇するので,加熱量に変化が生じると考えられる.この影響がどの程度かを見積もる.
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Research Products
(4 results)