2013 Fiscal Year Annual Research Report
自由振動理論、及び素粒子物理学を応用した氷衛星の内部構造の決定
Project/Area Number |
12J08700
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
庄司 大悟 東京大学, 地震研究所, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | エンセラダス / 潮汐加熱 / 系外惑星 |
Research Abstract |
土星の衛星の一つであるエンセラダスは、様々な観測結果から、内部に液体の水からなる海(内部海)が存在している可能性が非常に高い。しかし、エンセラダスのような小さな天体(半径250km)が液体の水を維持できるメカニズムはよくわかっていない。氷衛星における一般的な熱源は岩石に含まれる元素の放射壊変か中心の惑星との潮汐加熱である。しかし、エンセラダスサイズの天体では、どちらの熱源でも内部海を維持できないことが問題となっている。 しかし、潮汐加熱は衛星の内部構造や軌道に大きく依存し、また、軌道や内部構造の進化も潮汐による熱量に依存している。内部に熱が発生すれば、衛星の内部構造は変化し、軌道もエネルギーが保存されるために、熱量との関係で変化する。そのため、潮汐加熱を検討する際には、内部構造や軌道との相互作用を考慮する必要がある。エンセラダスおいて内部構造と軌道の相互作用を考慮した研究は、非常に単純なモデルの場合を除いて行われていない。今回、最新の観測結果から推定されたエンセラダスの構造及び熱モデルを取り入れた詳細な潮汐相互作用の計算を行った。その結果、内部にアンモニアなどの不純物が混ざり氷の融点が低下した場合、エンセラダスの軌道離心率は潮汐加熱によって内部海を常に維持しながら、高い値と低い値を振動して変化することが可能であることが分かった。離心率の低い値は観測値とよく合っていることも示された。これらの結果から、我々はエンセラダスの内部海は潮汐によって軌道が常に変化しながら維持されているという仮説を立てて発表を行った。 また、エンセラダスで考察した理論を系外惑星の軌道進化にあてはめて計算を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来の研究であるエンセラダスの潮汐加熱と軌道及び内部構造の相互作用という研究を発表できたことに加え、その研究で用いた理論を系外惑星の進化にも応用することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、地球を除けば水蒸気の噴出が確認されている天体はエンセラダスのみであるが、最近エウロバとケレスでも水蒸気が噴出していることが観測された。これらの天体では内部に液体の水が含まれている可能性があり、生命探査からの点からも重要な研究対象である。今後は、エンセラダスの研究で用いたアイデアや理論を他の天体に応用し、内部構造と活動メカニズムの解明を目指す。ケレスに関しては、既にプルーム上昇に関する計算を開始している。さらに、系外惑星への拡張も検討中である。
|
Research Products
(2 results)