2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08741
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
落合 秀紀 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 全合成 / パラジウム / ダブルアミノ化 / Discorhabdin / 分子内アルキル化 / ピロロイミノキノン / スピロジエノン / インドール |
Research Abstract |
銅触媒に代えても進行することを見いだしたパラジウム触媒を用いたダブルアミノ化反応を基軸としたDiscorhabdin Cの形式全合成は、これまでの方法に比べて圧倒的な短行程で実現可能でありDiscorhabdin類の合成に必要なピロロイミノキノン骨格を簡便に合成する方法を提供できた。これは多くの海洋性アルカロイドの網羅的合成にも展開できるポテンシャルを秘めている。しかし、合成終盤に低収率な変換が連続し、またスピロ環構築に際しては北らの方法を踏襲するなど独自性に乏しい点が問題であった。そこで、Discorhabdin類の網羅的合成を視野に入れた、スピロ環構築法について検討した。信頼性が高く天然物合成に広く用いられるHeck反応に着目した結果、高度に多官能基化された複雑な基質にも関わらず、反応は円滑に進行し、目的のスピロ環を高収率で与えた。ここからスピロジエノンへの変換も達成できた。これはDiscorhabdin Pの短行程合成への展開が期待できる。一方、スピロジエノンへの臭素原子の導入は困難を極めた。そこで、臭素原子を予め導入しておくことが可能なパラアルキル化について再考した。そして独自性をさらに追求すべく、これまでに自身が確立したオルトアルケニルイソシアニドのラジカル環化反応を基軸とするDiscorhabdin Cの合成ルートの抜本的な見直しを行った。その問題点として①重要中間体である三環性骨格の構築に多段階を要していたこと②臭素原子の導入に保護基の脱着を伴い工程数の増加の原因であったこと③スピロ環構築が低収率であったことが挙げられた。①はインドール骨格の反応性を巧みに用い増炭することで②は臭素原子を予め有するユニットを合成に導入することで解決できた。具体的には臭素原子の脱落を伴うことなく、鈴木宮浦カップリング反応を行うことができた①②の融合により、これまで重要中間体の合成に25工程要していたところを17工程に削減することに成功した。一方③に関して詳細な検討を行い、2つの窒素原子の保護基をより強固なものに変更することにより、スピロ環構築における収率を大幅に向上させることに成功した。これらを総合することで、私は実用的観点からも効率的なDiscorhabdin Cの合成方法論を提供できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Discorhabdin類の中で全合成を達成したものはDiscorhabdin Cのみであるが、他のDiscorhabdin類の合成に際し、必要な知見は十分に集めることができた。例えば臭素原子の数が異なるDiecorhabidn E, P Dには容易に展開可能であるし、不斉炭素原子を有するDiacarhabdin Aなどに関しても、既に進行することが明らかとなったHeck反応に不斉配位子を添加することで、容易に展開することが可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、芳香環のピロロイミノキノンへの温和な酸化を検討する。先述のスピロ環構築における収率向上のため強固な保護基を導入したが、これに伴い、続くピロロイミノキノンへの酸化が進行しなくなるという問題が生じた。これは、メチルエーテルの切断を行いフェノールとすることで、超原子価ヨウ素などを用いて温和かつ中性条件で酸化することが可能であろうと考えられる。これが困難だったとしても、適切な保護基の選択、順序構成の最適化を行うことで、問題を解決することが可能であると考えている。
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Research Products
(1 results)