2012 Fiscal Year Annual Research Report
生体適合性を有する3次元ナノ・マイクロパターン化足場材料による歯周組織再生
Project/Area Number |
12J08746
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
北上 恵理香 山形大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ヒト歯根膜細胞 / PMEA / 生体適合性 / 歯周組織再生 / 中間水 / 血小板粘着 |
Research Abstract |
多分化能を有するヒト歯根膜細胞(PDL)は再生医療の有用な細胞源として期待されている。我々はこれまでに、優れた生体適合性を示すPoly (2-methoxyethyl acrylate) (PMEA)およびその類似体について報告している。本研究では、歯周組織再生用の足場材料としての可能性を検討するために、PMEAおよびPMEA類似体上におけるPDLの接着性、増殖性、および細胞外マトリックス(ECM)形成能を検討した。 PMEA、PMEA類似体およびPoly (2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine-co-butyl mathacrylate) (30:70mol%) (PMPC)の各高分子をスピンコーターによりPolyethylene terephthalate (PET)上にコーティングした。各高分子基板上でPDLを培養後、細胞を固定し、DAPI、蛍光phalloidin、抗vinculin抗体、抗I型collagen抗体、抗fibronectin抗体で染色し、共焦点レーザー顕微鏡で細胞数およびECM形成能を評価した。 Poly[2-(2-methoxy ethoxy)ethyl methacrylate](PMe2MA)を除く全てのPMEAへ類似体上のPDLはPET上の細胞と同程度増殖し、各ECM(I型コラーゲン、フィブロネクチン)形成が良好であった。一方、PMe2MA、PMPC上の細胞はPET上の細胞に比べ、増殖が低く、各ECM形成が少なかった。 以上の結果から、PDLはPMe2MAを除く全てのPMEA類似体上に接着、増殖し、ECMを形成していることが明らかになった。PMEAおよびPMEA類似体表面上には血小板などの血液細胞が接着、活性化しにくいことが確認されていることから、PDL細胞は選択的に接着・伸展することがわかった。血小板粘着が軽微で、かつPDLが接着、増殖可能なPMEAおよびPMEA類似体は血液接触環境下における歯周組織再生用の足場材料として期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
再生医療実現のための細胞源として近年注目されているヒト歯根膜細胞の接着、増殖、機能を生体適合性高分子材料上で制御できることを初めて見出した。また、高分子材料表面に形成される水和構造に注目し、細胞接着機構の解明に取り組むことで、高分子材料と特定の分子間力で相互作用した水と細胞接着との相関を明らかにした。これらの成果は、国内3件、国外4件の学会発表および2件の受賞に結びついた。
|
Strategy for Future Research Activity |
・中間水量の異なる高分子材料上におけるヒト歯根膜細胞の初期接着、接着形態、細胞数、細胞運動性、細胞接着強度、遺伝子発現、細胞外マトリックス産生、細胞分化などを調べる。接着斑と細胞接合分子の抗体染色を行い、細胞-材料間、細胞-細胞間相互作用の解析を行う。 ・RT-PCRにて、脂肪、骨、筋肉、未分化マーカーを調べ、細胞外マトリックス産生、細胞分化に欄連する遺伝子発現を明らかにする。 ・材質とナノ・マイクロメートルレベルでの表面形状を組み合わせて、中間水量を制御した生体適合性材料上で、細胞の接着・増殖・機能の評価、遺伝子発現、細胞外マトリックス産生、細胞分化などを調べ、細胞-材料間、細胞-細胞間相互作用の解析を行い、細胞-材料間相互作用を解明することにより、材料が有する中間水量と細胞接着との相関関係を明らかにする。
|
Research Products
(8 results)