2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08787
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
帶谷 俊輔 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際連盟 / 東アジア国際政治史 / 日本 / イギリス / 中国 / 内戦 / 代表権問題 / 普遍的国際機構 |
Research Abstract |
本年度は特別研究員の採用1年目として、修士論文の改稿と、1920年代の「中国問題」に国際連盟を関与させる構想について史料調査及び論文執筆に取り組んだ。前者の作業の成果は、「『普遍的』な国際連盟の模索-1926年の理事会拡大改革とチャコ紛争(パラグアイ・ボリビア紛争)-」として『国際関係論研究』第30号に掲載が決定している。 史料調査は、国内では外務省外交史料館の「外務省記録」、国立国会図書館憲政資料室の所蔵する多数の個人文書を中心に調査した。「イギリス内閣文書」などのウェブで利用できる史料、東京大学総合図書館所蔵の『国際連盟公報』、東京大学東洋文化研究所所蔵の『中日関係史料』など公刊史料についても随時閲覧している。さらに、9月に3週間ほどスイスのジュネーヴとイギリスのロンドンに滞在して、国際連盟史料館とイギリス国立公文書館、大英図書館に赴いた。国際連盟史料館では「国際連盟文書」、「部長会議議事録」、イギリス国立公文書館では「イギリス外務省文書」、大英図書館では「セシル・オブ・チェルウッド文書」を調査した。これらの文書から、日英それぞれの東アジア秩序構想における連盟の位置付けや、日英関係とそれぞれの連盟に対する姿勢の連関、連盟及び連盟事務局の主体性について明らかにすることができた。また、中国の内戦状況によって生じた連盟における中国代表権問題と、それが連盟の中国に対する関与に与えた影響について検討している。 調査の成果を研究会で報告した結果、国際連盟史・日本外交史・イギリス外交史・中国外交史の研究者から貴重な指摘や批判を頂いた。それを踏まえたうえで論文を執筆しており、学術誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
修士論文を元とした論文の掲載が決定した。また本年度に取り組むことを予定していた、1920年代の「中国問題」に連盟を関与させる構想の検討についても、史料調査を既に行い論文執筆の段階に至っている。そのためほぼ計画通りに進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はそれぞれ公刊史料を用いているものの、十分には明らかにしていないアメリカと中国の秩序構想における連盟の位置付けを検討する。そこでは同時に、連盟と他の多国間会議や国際的枠組みの間に構築された関係の様相を明らかにする予定である。また、修士論文で扱った連盟のラテンアメリカに対する関与と本年度の成果を合わせ、普遍的国際機構としての国際連盟の全体像を描き出す作業を行う。 個人文書の調査が相対的に不足しているため、国内外を問わず積極的に調査を進めていく。
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