2013 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質神経系前駆細胞の未分化性維持における転写伸長制御の役割の解明
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12J08801
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 寛 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経系前駆細胞 / N-Myc / 転写 |
Research Abstract |
①神経系前駆細胞において、ニューロン分化において重要な役割をもつ遺伝子がN-Mycの標遺伝子あることを見出した。 N-Mycは神経系前駆細胞の運命制御も行う遺伝子である。そのため、ただ単純に過剰発現するだけでは様々な状態にある細胞の混合物になってしまい、N-Mycの標的遺伝子の探索に支障を来す可能性がある。そこで、誘導型のN-Mycを作成し神経系前駆細胞にN-Mycの過剰発現するタイミングをそろえられるようなシステムを構築した。このシステムによって、神経系前駆細胞が均質な状態にある集団の転写産物を解析できるようになり、神経系前駆細胞におけるN-Mycの標的遺伝子の探索がより行いやすくなる。その結果、ニューロン分化のおいて重要な役割をもつNgn2の転写量がN-Mycの過剰発現によって上昇することを見出した。さらに、Ngn2の上流にN-Mycが結合してその転写を促進するかをクロマチン免疫沈降法で検証したところ、N-MycはNgn2の上流に直接結合することを見出した。 さらにNgn2のみではなく、新規のニューロン分化誘導因子としてPlag1とPlagL2を予備的にではあるが見出した。現在はこれらの機能についての更なる検証を行っている。 ②神経系前駆細胞においてN-Mycは転写伸長の中断を解除すること可能性があることを見出した。 ES細胞を用いた研究などから、Myc familyタンパク質の1つであるc-Mycの新たな転写に関する機能が報告された。それは遺伝子の転写が転写開始点の近傍で中断されているのを再開させるという機能である。このことから、同じMyc familyタンパク質であるN-Mycにも神経系前駆細胞において同様の機能がある可能性が考えられる。そこで、PolII抗体を用いたクロマチン免疫沈降法を用いて、N-Mycの過剰発現によってPolIIの分布がどのように変化するかを検証した。その結果、神経系前駆細胞においてN-Mycの下流で転写量が上昇することを見出した遺伝子であるNclについて、N-Mycの過剰発現によって転写伸長の中断が解除されたことを示す結果を得た。 Ngn2においても同様の制御段階の存在を示唆する結果を得た。現在はそれの更なる検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
自らの考えたモデルの検証には、そのモデル遺伝子の決定が大きな課題になると考えていた。しかし、1年目にしてその候補の遺伝子を同定できた。また、仮説通りにN-Mycが神経系前駆細胞においても転写伸長制御を行っていることを証明できたのも大きな進展である。またさらなる候補遺伝子を同定できたのも大きな進展であると考えている/今後はより多くのモデル遺伝子の同定など、データを積み重ねていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
課題としては、より大規模に転写伸長制御が行われている遺伝子を探すことがあげられる。その際の問題点として、当研究室には大規模シーケンサーがないことがあげられる。だがこの点に関しては同じ研究所に大規模シーケンサーを持つ研究室に協力を依頼できれば解決できると考えている。また、当研究室ではPcGが転写伸長を抑制する要素として考えているが、最近の研究では転写抑制因子Tcfsもその機能を担う可能性が出てきた。そこで、PcGとN-Mycの二項対立だけではなく、Tcf3もN-Mycのantagonistになりうると考え、研究を進める。実際に、Tcf3が抑制のターゲットにしている遺伝子と、N-Mycのターゲットが共通していることを示唆する結果も得ているので、さらにこの仮説の正しさについて検証を重ねていく予定である。これまでの解析に加え、近年みずから同定した新規ニューロン分化誘導因子についても、既知の誘導因子とのクロストークがあるのかなど機能解析を進めていく。
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