2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J08815
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉戸 勇気 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ビロード革命 / チェコ文学 / チェコ美術 / プラハ / ボフミル・フラバル / ミラン・クンデラ / ルドヴィーク・アルムブルスター |
Research Abstract |
1、報告者は、ボフミル・フラバルの小説に引用される絵画のイメージについて研究を行った。小説の上に文字として変換されて現れる先行絵画のイメージは、時として物語を駆動させる原動力ともなり、「英雄」的な側面をもつ主人公をはじめとする登場人物や個々の場面に付与される意味を重層的に理解するのに役立つ。フラバル文学における絵画の研究は、これまで十分な研究がなされておらず、解釈に新たな光を投げかけるものである。 2、ミラン・クンデラが二十世紀中盤に発表した短編小説について査読付き論文を発表した。ここでは現実と虚構が入り混じっていくようなこのミラン・クンデラの小説を、当時のチェコの歴史性と重ねあわせながら分析した。 3、報告者は博士論文の予備審査を通過した。ここでは従来の研究を総括し、作家ボフミル・フラバルとビロード革命周辺前後にデビューした若い作家たちについて焦点を当てて論じた。 4、二十世紀チェコの知識人で日本とも交流の深い哲学者でカトリック神父ルドヴィーク・アルムブルスターの長編インタビューを翻訳する作業に取り掛かった。これはナチスドイツ、ソヴィエトに支配されたチェコの状況を実際に体験した者が語った口述資料であり、具体的イメージの描きにくい二十世紀のチェコの状況を知るために意義深いものである。今夏刊行する予定である。 5、報告者はこれまでの研究の延長上に、十九世紀末にはじまるチェコの近代美術の歩みについても新たに研究を進めた。夏には現地に二週間滞在しフィールド・ワークを行った。地方美術館や国立資料センターを訪ね、フラバルや二十世紀チェコの画家たちに関連する手稿や手紙を集めるなどしながら一連の研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
査読付きの成果を出したが、一本にとどまったため(2)とする。
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Strategy for Future Research Activity |
採用期間第一年度は、ビロード革命以前の研究を行った。この成果を早急にまとめるとともに、第二年度は革命以後のより現在に近い時代の研究を推進したい。最終的にチェコ文化史に与えたビロード革命のインパクトを俯瞰的に検討する視野を獲得することを目標にする。小説の翻訳にも新たに取り掛かる予定である。
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Research Products
(1 results)