2012 Fiscal Year Annual Research Report
保型表現に伴うL関数の特殊値とSelmer群の関係についての研究
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12J08820
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 雄一 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | L関数の特殊値 / p進L関数 / Selmer群 / 岩澤理論 / 保型形式 / Eisenstein級数 / 合同加群 |
Research Abstract |
今年度は、主に総実代数体上のHilbert保型形式に伴うp進Galois表現が剰余可約な場合の2次元岩澤理論について考察をした。その中で、Hilbert Eisenstein級数に伴う(肥田晴三氏によって定義された)合同加群の構造について調べ、2つの知見を得た。1つは、ある条件下で、実2次体上の場合にRibet氏の定理の類似の別証明を与え、剰余既約な場合の1次元岩澤理論的な結果を得たことである。もう1つは、有理数体上の剰余可約な2次元岩澤理論に関する申請者のこれまでの研究を踏まえ、合同加群と実2次体上の剰余可約な2次元岩澤主予想との関係を与えたことである。各々について下記で説明する。 前者の方法は、Berger氏とSkinner氏による虚2次体に関する手法の類似である。申請者は、一般の次数nの総実代数体上のHilbert保型形式に伴うnコサイクルを具体的に構成し、相対コホモロジーと相対ホモロジーのベアリングを用いて、カスプ形式とは限らないHilbert保型形式に伴うL関数の特殊値を記述した。これにより、L関数の性質を用いてHilbert Eisenstein級数に伴うコサイクルを調べることで、ある条件下で(特に実2次体の場合には)、合同加群の位数とHilbert Eisenstein級数の定数項のp進位数が一致させることに成功した。 後者は、Stevens氏、Greenberg氏とVatsal氏や申請者の有理数体上に行われた手法を総実代数体の場合に一般化する目的で行った。この手法において、Hilbertカスプ形式及びHilbert Eisenstein級数に伴うL関数の特殊値の間の関係を調べることは有用である。その際、Eisenstein級数から定まるコサイクルの像が整数環に含まれることを示すのが重要である。そのことを合同加群を用いて解釈して証明したのが新しい部分である。最近のSkinner氏とUrban氏による2次元岩澤主予想の結果では、剰余可約な場合は除外されており、今回のこの手法は剰余可約な岩澤理論において有用な手法であると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Hilbert保型形式に伴うコサイクルを一般の総実代数体上で構成できたことは予想以上の収穫であった。この手法は他の代数群にも適用できると期待している。他方、総実代数体の次数が高くなると、単数群の構造が複雑なこともあり、調べるべきコホモロジーの性質をうまく抽出することが困難であった。実際、これらについて文献はほとんどなかったが、実2次体の場合にのは、交付申請書類に記載した1年目の年次計画以上のことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、実2次体の場合に、整p進Hodge理論を用いてHilbertカスプ形式とHilbert Eisenstein級数のFourier係数の間の合同式からそれらに伴うL関数の特殊値の間の合同式を導く。さらに、Greenberg氏とVatsa1氏による有理数体上の2次元岩澤主予想の結果を実2次体へ一般化する。 また、他の保型形式の場合においてもコサイクルの構成を行い、L関数の特殊値との関係について調べる。
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