2012 Fiscal Year Annual Research Report
非線形現象を有する反応蒸留システムのためのプロセス強化方法論の構築
Project/Area Number |
12J08875
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山木 雄大 山形大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プロセス強化 / 反応蒸留 / 非線形現象 / 多重定常状態 / 反応速度 |
Research Abstract |
化学反応と蒸留分離を1つの装置で操作できる反応蒸留システムは,従来の多段階プロセスと比して,反応性能の向上や削減したユニット分の省エネルギー化が可能になることからプロセス強化技術の1つとして注目されている.しかしながら,反応と分離を同時に操作するために,プロセス特性は強い非線形性を示し,その1つとして多重定常状態が出現する.それまでは,反応蒸留を安全に運転するためにこの領域を避けたオペレーションが推奨されてきたが,この領域での運転が可能となれば操作レンジや適用系の幅が広がるだけでなく,プロセス性能向上も達成できる可能性がある.しかし、反応蒸留における多重定常状態出現メカニズムについては明らかになっていない.そこで本研究では,この非線形現象を利用した反応蒸留システムの強化方法論の構築を目指し,本年度は,多重定常状態出現の支配因子についてモデルベースで検討を行った。 モデルは,反応メカニズムが既知であるtert-amyl methyl ether (TAME)合成を対象とした反応蒸留について,プロセスシミュレータを用いてモデリングを行い,操作変数および反応速度について感度解析および分岐解析を行った.その結果,リボイラ負荷とTAME組成の間で多重定常状態が出現することが分かった。また,還流比やフィード流量といった塔内流量に影響を与える変数に対して強い感度を示すことから,多重定常状態は塔内気液流量によりコントロール可能であることが分かった.塔内気液流量は塔内組成に影響を与え,さらに反応部での合成反応に影響を与えることから,反応速度が多重定常状態に強く影響すると推察される.そこで,平衡反応モデルと反応速度モデルを用いてシミュレーションを行った.その結果,平衡反応モデルでは多重定常状態は出現しないことが分かった。これらより,多重定常状態出現に対して反応速度が支配因子であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,プロセス強化技術の1つである反応蒸留システムを対象に非線形現象である多重定常状態を利用した強化方法論の構築を目的としており,これを達成するためには「非線形現象の解析」と「プロセスダイナミクスへの影響」を解析する必要がある.本年度は,非線形現象の解析として出現メカニズムについて検討を行い,その支配因子を明らかにすることが出来たことから,おおむね順調に進展していると評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
採用初年度は,反応蒸留における多重定常状態出現のキーパラメータについてプロセスシミュレータを用いて検討を行った.その結果,多重定常状態出現の支配因子は反応速度であり,これをコントロールするために塔内気液流量が重要であることが明らかとなった.これらの結果より,反応部での化学反応と物質移動の速度を考慮したプロセス設計が重要になることが明らかとなった,そこで今後は,多重定常状態出現領域でのプロセスダイナミクスについて解析するとともに、数値流体力学(CFD)シミュレーションを用いた,反応部でのミクロな領域での挙動についても検討を行う予定である.これにより,反応速度と多重定常状態出現の関係性を解明することができれば,その条件を満たすインターナル設計などへ応用できると推察される.
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