2013 Fiscal Year Annual Research Report
非線形現象を有する反応蒸留システムのためのプロセス強化方法論の構築
Project/Area Number |
12J08875
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山木 雄大 山形大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プロセス強化 / 反応蒸留 / 非線形現象 / 多重定常状態 / 反応速度 |
Research Abstract |
化学反応と蒸留分離を1つの装置で操作できる反応蒸留システムは、従来の多段階プロセスと比して、反応性能の向上や削減したユニット分の省エネルギー化が可能になることからプロセス強化技術の1つとして注目されている。その一方で、反応と分離を同時に操作するために、プロセス特性は強い非線形性を示し、その1つとして多重定常状態が出現する。これまでは、反応蒸留を安全に運転するためにこの領域を避けたオペレーションが推奨されてきたが、この領域での運転が可能となれば操作レンジや適用系の幅が広がるだけでなく、プロセス性能向上も達成できる可能性がある。しかしながら、多重定常状態領域で操作した際に反応性能が向上するのかあるいは低下するのか明らかになっていない。また, 多重定常状態領域で反応蒸留プロセスの操作の実現可能性についても明らかになっていない。そこで本年度は、多重定常状態を有する反応蒸留のプロセス特性とその領域で操作した際のプロセスの安定性について検討を行った。 本研究では、tert-amyl methyl ether (TAME)合成のための反応蒸留プロセスを対象にモデリングを行い, 定常シミュレータを用いてプロセス特性の解析を行った。その結果、多重定常状態が出現しない領域と出現する領域の反応率の比較検討より、多重定常状態領域内の定常点で反応率が向上することが分かった。また、非定常シミュレータを用いて多重定常状態領域内での反応蒸留プロセスを操作した際の安定性の解析を行った。その結果、多重定常状態領域においても反応蒸留プロセスは操作可能であり、さらに、運転性を向上させる可能性があること分かった。これらの検討から、多重定常状態を利用することで反応蒸留プロセスの強化が可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、プロセス強化技術の1つである反応蒸留システムを対象に非線形現象の1つである多重定常状態を利用した強化方法論の構築を目的としており、これを達成するためには多重定常状態がプロセス性能およびダイナミクスへ及ぼす影響を解析する必要がある, 本年度は、これらの2つの解析を行い、多重定常状態でも操作が可能であり、さらに、反応性能も向上することを明らかにできたことから、順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
採用2年度目までは、反応蒸留プロセスにおいて出現する多重定常状態を利用した強化方法について検討を行ってきた。その結果、多重定常状態領域で反応蒸留プロセスを操作することが可能であり、また, 反応性能を向上できることが分かった。これらの結果より、この領域を利用した反応蒸留プロセスの強化が可能であることを明らかにした。これまでは、操作による反応蒸留の強化について検討を行ったが、反応部において化学反応にともない発生する反応熱の有効利用については検討されていない。そこで今後は、反応熱を蒸留分離の熱源として利用した省エネルギー反応蒸留システムの設計および操作方法の検討を行う予定である。
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