Research Abstract |
本研究の目的は,複数のエージェントが局所的な通信を行いながら,全体としてある目的を達成するシステムであるマルチエージェント系において,通信路を介して伝達される情報や,エージェントの動特性を表すモデルに不確実性がある場合を想定し,これらの不確実性がシステムの挙動に及ぼす影響を理論的に解析することである.本年度は単一の通信路と一組の制御対象・制御器から成るネットワーク化制御系を対象として,「情報伝達の不確実性とモデルの不確かさに関して,システムの安定化を達成するためにはどの程度の確実性が必要か?」という問題に対する基礎理論の確立を目的とした. まず,制御対象と制御器間の情報伝達の不確実性と,制御対象の不確かさのモデル化を行った.とくに情報伝達の不確実性については,(1)デジタル信号の通信を想定して,観測した制御対象の状態が量子化された後に制御器に送信される.また,(2)輻輳や遅延などにより確率的に通信パケットがロスすると仮定した. つぎに,上記のシステムについて安定化を達成するための条件を求めた.得られた結果から,制御対象のモデルに不確かさがある場合には,既存の研究結果から示唆されるよりも陽に高い通信品質(不確実性の低い通信路)が求められることがわかった.また,通信資源をより効率的に使用する新たな量子化の手法を提案した. 以上の成果の一部を,学術論文誌IEICE Transactionsに投稿し採択されたほか,American Control Conf.(6月, Montreal, Canada),IEEE Conf.Decision&Control(12月, Maui, USA)等の国際学会,システム制御情報学会等が主催する国内学会で発表した.また,本研究に関連する内容の,昨年度行った学会発表に対して,計測自動制御学会制御部門より研究奨励賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,通信路が単一なネットワーク化制御系について理論的な解析を中心に行った.また,得られた結果の妥当性を数値シミュレーションで確認した.研究成果を査読付きの国際学会で発表したほか,学術論文誌に投稿し,掲載が決定している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度得られた結果を大規模なシステムを対象とした理論へ発展させ,マルチエージェント系を含めたネットワーク化制御系について,情報量と制御性能の関係を明らかにする.その際,本年度に確立したモデルをもとに解析を行うが,現状のモデルは大規模システムの特徴に合致しない点があるためこれを改善する.
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