2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストンアセチル化制御による大脳皮質での産生ニューロンスイッチング機構の解明
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12J08939
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
蔡 慕淇 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒストンアセチル化 / 神経幹細胞 / 分化 / ニューロ |
Research Abstract |
本研究課題では、(1)マウス大脳皮質形成過程において深層ニューロン、及び浅層ニューロン特異的に発現する因子の時空間的発現制御機構を解析すること、(2)ヒストンアセチル化によるそれら層特異的マーカー遺伝子の発現変動を解析することで、脳形成におけるヒストンアセチル化の役割を解析する。 生体内においてヒストンアセチル化の影響を確認するため、ヒストンアセチル化酵素阻害剤であるバルプロ酸を、ニューロン分化が始まる妊娠12日目から14日目に一日一回妊娠マウスに経口投与し、層特異的マーカータンパク質の発現が変化することを確認した。ES細胞において、生体内でみられる脳発生の一部を培養皿の上でも再現できることが知られているが、生体内で見られたこれらの発現変化が、ES細胞を用いた神経細胞への分化培養系でもバルプロ酸の添加によって同様にみられるかを検討した結果、VPA投与により、浅層マーカーであるCux1陽性ニューロンの数が増加し、深層マーカーであるCtip2陽性ニューロンが減少することを免疫染色法により確認した。さらに、VPA投与によって深層ニューロンの形成に必須であるFezf2の発現が減少すること、逆に浅層ニューロンマーカーであるCux2,Satb2の発現が増加することを定量的PCR法及び免疫染色法により確認した。このことは、ヒストンアセチル化の制御によって浅層、深層ニューロンといったニューロンサブタイプをコントロールできる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、妊娠12日目から14日目にかけ、一日一回バルプロ酸を妊娠マウスに経口投与し、層特異的マーカータンパク質の発現が変化することを確認した。ES細胞は、生体内でみられる脳発生の一部を培養皿の上でも再現できることが知られているが、これらの発現変化が、ES細胞を用いた培養系でもバルプロ酸の添加によって同様にみられることを明らかにした。これらに対するメカニズム解明に向け、特異的な転写因子の発現変化も確認しており、当初の計画以上の進展があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、バルプロ酸がHDAC阻害剤であることから、HDAC1、HDAC2及びその両方をコンディショナルに欠損させることができるES細胞を用いた解析にも着手する。
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Research Products
(2 results)