2012 Fiscal Year Annual Research Report
小型衛星の表層進化に着目した土星系化学的分別過程の解明:太陽系初期進化の理解へ
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12J08965
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平田 直之 東京大学, 総合研究博物館, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 小型衛星 / 土星系 / 表層進化 / 環 |
Research Abstract |
小型衛星の形状は小型衛星の地質学的特徴、内部構造の推定、化学的性質などを解析する上で必要となる基礎的な情報である。そのため、まず小型衛星の形状を画像から再現することを行った。形状解析に必要な画像処理ソフトやパソコンを用意し、数値計算的に詳細な形状モデルの構築を行った。エピポーラ幾何と呼ばれる手法を用いて衛星の近似的形状として3000枚ほどのポリゴンを得た。これらポリゴンと実際の画像と比較して、よく一致していることを確かめた。この手法でヘレネと呼ばれる衛星の形状モデルを構築した。続いて衛星上のクレーター数密度の調査、勾配分布の解析、円筒図の作成、微地形に関する詳細な記載をおこなった。ヘレネ上では100個余のクレーターを認め、これらのサイズと位置を測定した。最も大きなものは北極に位置し衛星直径の半分に及ぶこと、先行半球側にクレーターがほとんど存在しないことを明らかにした。さらにヘレネでは表層に微細な筋状構造が多数存在することを発見し、詳細な記載をおこなった。その結果これら筋状構造が先行半球にのみ存在していること、クレーターが欠乏している領域とよく一致することなどを明らかにした。また、勾配分布図との比較の結果、表面重力と筋状構造の方向がよく一致していることも明らかにした。このため筋状構造が堆積作用と地すべりによって形成されたものであることを我々は明らかにした。 E環の粒子の挙動を理論的モデルを通じて、これら衛星の表層の有様がE環との相互作用の結果生じていることを明らかにした。具体的には、ヘレネの先行半球に粒子が堆積しやすいこと、これらの粒子がエンセラダスの火山活動によって放出された粒子を起源とすることなどを明らかにした。さらにエンセラダスの火山放出物による堆積物を発見したことにより年代の推定が可能になり、エンセラダスの火山活動が極めて短命なものである可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衛星の網羅的かつ基本的な情報を統合整理し、環の挙動に関するモデル化を計画的に進めている。それらの結果想定していたとおり、環と衛星との相互作用が環や衛星の化学的進化に重要な貢献をしていることを示唆するものだった。また上述の成果について、国際学会誌に発表するべく準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
E環およびE環領域の衛星群の相互作用についてより深い理解を得るためにより詳細な環の挙動についての数値シミュレーションを進める予定である。また我々はヤヌスと呼ばれる別の小型衛星に関する調査を始めている。ヤヌスでもすでに形状モデルを構築しており、衛星表層の重力的低所に環の堆積物が存在している可能性があることを発見している。これらの位置も環の粒子の挙動と衛星への衝突に密接な関係がある感触を、理論的考察から得ている。これらを実証するため、精度の高いN体数値計算をするべく準備を進めている途中である。具体的には環の粒子が衛星に衝突を起こす際、衛星の領域ごとの衝突確率の全球分布、フラックスについての計算を行う予定である。
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Research Products
(4 results)