2012 Fiscal Year Annual Research Report
身体から社会的知能への統一的発達モデルによる主体形成の構成論的解明
Project/Area Number |
12J08968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 康智 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 発達 / 胎児 / シミュレーション / ヒト / ゼブラフィッシュ / 脊髄神経回路 / 身体性 / 運動発達 |
Research Abstract |
発達過程の一部の段階、機能を取り出して扱う従来研究に対し、本研究では可能な限りその原初から連続的な過程として発達を扱う事で、発達の本質的理解と、再現可能な形での原理抽出を目指す。この目的のもと、本年度は下記の三点を中心に取り組んだ。 1.身長や体重、筋力等の物理パラメータを胎齢に応じて調節可能な脊椎動物の胚・胎児モデル(ヒト・イヌ・ゼブラフィッシュ)を構築した。ヒトのみではなく、複数種のモデルを扱う事で、様々な知見を用いて比較検討を行う事が可能になり、総合的な発達理解を可能にする。 2.次に、脊椎動物に共通して観察され、初期の神経系・運動発達において重要な役割を果たすとされる、全身の自発運動について、その機序を身体性の観点から明らかにした。具体的には、身体性及び自発運動を情報理論とネットワーク理論を組み合わせることで定量化し、共通のメカニズムから、それぞれの種の身体性に応じて自発運動が創発可能である事を示した。 3.最後に、この自発運動を通じた神経系・運動発達についてシミュレーションを行い、生体において観察される複数の発達的変化を再現した。具体的には、身体性に基づく自発運動から、ヒトにおいては交代性脚運動や胎齢の増加に伴う運動の複雑性増加、ゼブラフィッシュにおいては散逸的な運動から蠕動運動への発達的変化を再現することができた。以上は従来、神経系の発達的変化により説明されており、本研究では身体性による新たな説明可能性を示した点で重要である。 上記の一連の研究成果は、国内学会3本、査読付き国際学会2本として発表を行っており、4つの賞をいただいている。 更に共同研究として、ロボットを用いた道具使用獲得モデル、自己から環境へと連続的に遷移する発達モデルについて研究を行い、身体から社会的知能へと統一的に扱うモデル構築に向けた研究を着実に進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
胚・胎児が自発運動を開始し、社会的知能を獲得する一連の発達過程の構成論的解明を目指す当該研究に対して、本年度は体系的かつ定量的に研究を行うために必要なシミュレーションの構築及び解析手法の提案を行うと同時に、初期の運動発達原理抽出に取り組み、成果を上げた。上記の結果は、今後の研究を展開し目的を達成する上で重要な基礎となり足場となる事が期待でき、初年度の進捗としては期待以上であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見と、構築したシステムを基に、身体から環境、社会的知能への発達モデルへ展開する。システムとしては、皮質モデルを構築し、胎児のみならず新生児、乳児へのモデルの拡張を行う。一部については既に研究を始めており、成果を出しつつある。
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Research Products
(9 results)