2013 Fiscal Year Annual Research Report
身体から社会的知能への統一的発達モデルによる主体形成の構成論的解明
Project/Area Number |
12J08968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 康智 東京大学, 大学院情報理工学系研究, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 胎児 / シミュレーション / 早産児 / 発達障害 / 体性感覚 / 身体表象 / 環境 / 構成論 |
Research Abstract |
本研究課題では、ヒトの胎生期から始まる連続的な発達過程を対象とし、自己の身体から環境・物体そして他者へと連続的に発達し主体を形成していく、その発達メカニズムの構成論的解明を目的としている。本年度は大脳皮質のモデル化を追加する事で、胎生期後期に観察される自己の身体に関するより高次部分の発達過程について研究成果を出した。具体的には以下の二つから成る。 1. 身体表象発達モデルと早産児に観察される各種異常の身体表象発達への影響予測 胎児シミュレーションに新たに大脳皮質体性感覚野のモデルを追加し、身体表象発達をシミュレートした。その結果、ヒトにおいて報告されている複数の発達現象を再現できる事を示しシステムの妥当性を確認した。次に、発達障害が社会問題化し胎生期経験の異常が注目される事を背景として、早産児や障害児に観察される形で異常をシミュレートし、通常想定モデルの結果と比較する事で各異常がどのように発達に影響を与えるのか予測を行った。本研究の成果は胎生期に生じる身体表象発達原理解明という科学的意義と、発達障害の機序理解と発達ケア提案に貢献する社会的・医学的意義から鑑みて極めて重要な成果だと言える。 2. 大規模脳モデルを有する胎児シミュレーションによる自己の身体に関する複数認知機能創発 本研究では、大規模脳モデルを有するヒト胎児シミュレーションを世界で初めて構築し、自己の身体に関する認知機能についての生物学的知見を単一のモデルにて複数再現できる事を示した。当該研究成果は、発達過程において脳神経系にだけ注目するのではなく、環境・身体・神経系の相互作用の中に発達過程を再現説明可能な要因がある事を実証的に示した研究であり、世界に先駆けた重要な研究成果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
早産児を想定した発達異常シミュレーションに基づく医学的方面への展開を例として、当初計画していた以上に当該研究課題の目的を深いレベルで達成し、意義を大きくする成果が着実に出ている事を理由として、当初の計画以上に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
自己の身体表象から環境・物体、そして他者へと拡張可能な発達モデルの構築を行う。同時に、これまで開発したシステムの更なる精緻化を行い、結果の妥当性を確固たるものとする。最後に、これまでの結果を総じて身体から社会的知能へ至る発達モデルとしてまとめる事で、当該研究課題の目的を達成する。一部については既に研究成果を出しつつあり、現状問題点はない。
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Research Products
(9 results)