2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J08976
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若林 大佑 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ケイ酸塩メルト / 状態方程式 / ガス充填装置 / ケイ酸塩ガラス |
Research Abstract |
昨年度までに得られた高密度化SiO2ガラスに関する研究成果に基づいて、100GPa程度の圧力領域までのSiO2メルトの圧縮挙動を推定した。このモデルに従えば、SiO2メルトは上部マントル深部(マントル遷移層を含む)の圧力条件下において、高密度化メルト相として振る舞うことが示唆される。SiO2成分が高密度化した状態(相)にあることを仮定し、上部マントル深部の圧力条件下において広い組成範囲のケイ酸塩メルトに適用可能でかつ単純な状態方程式を決定した。得られた状態方程式は、これまでに報告されている大型プレスを用いて測定された8GPaから22GPaの圧力範囲のSiO2成分を35-55mol%程度含む全てのケイ酸塩メルトの密度データを良く説明する。過去に報告されている状態方程式は、文献ごとに大きく食い違っている。複数の状態(相)を単一の状態方程式で記述しているところに、その主な原因があると推察される。これらの内容については、国内外の学術会議において発表を行うとともに、論文としてまとめて発表した。 ガス圧力媒体中のケイ酸塩ガラスを炭酸ガスレーザーによって各圧力条件下でアニールすることができれば、構造が緩和した状態でのガラスの体積変化が測定可能となる。構造が緩和した状態のガラスは、メルトの構造や密度を良く反映していると考えられるため、この測定は、上記の論文のモデルを実験的に確かめる上で大きな前進となる。初年度の計画の一つであったダイヤモンドアンビルセル(DAC)の試料室へのガス充填を行うための装置を立ち上げた。ガスを冷却し液化する方法を採用し、ガラス製のデュワーを用いて冷却剤の量やDAC内部の様子を容易に目視できるようにすることで、簡単かつ確実にガス充填を行うことが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より進めてきたケイ酸塩メルトの状態方程式に関する考察を論文として発表することができた。また、ダイヤモンドアンビルセルの試料室へのアルゴンガス充填システムを立ち上げ、現在、各圧力条件下でアニールしたケイ酸塩ガラスの密度を測定するための予備実験を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ケイ酸塩メルトの状態方程式に関する論文を執筆している過程で、大型プレスを用いた静的圧縮による測定と衝撃圧縮による測定では、ケイ酸塩メルトの密度の報告値に系統的な食い違いがあることが判明した。この不整合の原因の解明は、今後の重要な課題の一つとして位置づけて取り組んでいる。また、論文で議論したケイ酸塩メルトの圧縮挙動を実験的に確かめるための第一段階であるアニールしたケイ酸塩ガラスの密度測定を目指して、現在、SiO2ガラスを試料とした予備実験を進めている。今後、MgSiO3ガラスなど他の組成のケイ酸塩ガラスも対象としていく予定である。
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Research Products
(5 results)